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Match Report マッチレポート

第89回全国高校サッカー選手権大会 レポートコラム

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gol.japan

トーナメント表
大会概要
2010/12/31

第89回全国高校サッカー選手権大会 1回戦 遠野-宇和島東

寺下友徳(フリーライター) 取材・文

10年12月31日(金)/14:10キックオフ/東京都・西が丘サッカー場/観客8450人/試合時間80分

宇和島東
3-0
0-0
遠野

立花(前半12分)
有間(前半20分)
中平(前半28分)

得点者  

試合は序盤から出色の動きを見せた宇和島東のゲームに。前半12分に⑨梶田の左から上げたピンポイントクロスを⑪立花が頭で合わせて先制点を奪うと、続く20分には⑩有間がゴール前の混戦から、28分には⑨梶田のクロスにボランチの位置から反応した⑧中平が追加点を挙げ、前半でほぼ勝負を決めてしまった。一方の遠野は後半に入ると、エースの⑩山本などによる仕掛けが機能し始めたものの、前半大量失点の焦りから決定機でのミスショットが目立ち無得点。かくして宇和島東にとって52年ぶり、首都圏開催となって初めての選手権初戦は、選手権常連の遠野を破っての大会初勝利という快挙で彩られた。


「探求」が実を結んだ宇和島東
低迷愛媛県勢に指針示す1勝!

 今年の開幕戦で大津(熊本)相手に初出場初勝利を挙げたのは、東京B代表の駒澤大高であったが、そのチームを率いる大野祥司監督は1989年度の第68回大会、武南(埼玉)のエースFWとして国立での決勝戦を戦ったことは知る人ぞ知る事実である。

 そしてその武南に勝利したのは、後に愛媛FCの生みの親となった石橋智之監督(現:愛光学園高サッカー部監督)に導かれ、愛媛県勢のみならず四国勢として選手権初優勝を果たした南宇和。大西貴(元・広島など、現:松山北高サッカー部コーチ)が高い戦術眼でディフェンスラインを統率し、中盤は黒田一則(元・JFL西濃運輸、現:会社員)が巧みなゲームメイク。前線では西田吉洋(元・広島など、現:プロポケットビリヤード選手)が豊かなスピードを生かしてゴールを奪い取るモダンなスタイルは、間違いなくこの時代の高校サッカーにおける最先端を走っていた。

 しかしそれから20年余が経過した現在、愛媛県勢は優勝どころか選手権1勝すら2004年度・第83回大会の済美以来なし。近年では相手の弱点を突く戦術を敷くのか、または個々をスタイル融合するのかといった勝利への方程式すら編み出せず、全国大会に出場できたことだけをよしとし、後世に課題すら残らない敗戦を繰り返す様は、他県との意識レベル差を如実に表わすものとなっていた。

 ところが今大会、母校監督就任12年目に「蹴史創新」を掲げた山本光生監督の下、四国大会優勝、名門・星稜(石川)を撃破してのインターハイ1勝という実績を携えて選手権の舞台に立った宇和島東イレブンは、遠野相手に近年の愛媛県代表とはひと味もふた味も違った戦いを見せてくれた。

 特に彼らが前半12分に挙げた先制ゴールは、彼らのスタイルが正に凝縮されたもの。まずは左SBの④百合田修平が「岩手県大会でのビデオを見たときにサイド攻撃が有効だと思っていた」山本監督の指示どおり、同サイドのスペースを見つけて「自分が仕掛けてからのクロスに自信を持っている」⑨梶田真司にドリブルコースを作るパスを供給。続いてスピードに乗ったドリブルで1人をかわした⑨梶田は、一瞬のダッシュ力に優れる⑩有間潤、⑪立花嵐の2トップが中央、ファーサイドの並びでゴール前へと潜入しているのを確認すると、ノーステップに近い形で速い左足クロス。

 結果、「相手とのマッチアップは五分五分だと思っていたが、最後のところでつききれなかった」(②簗場豪史)遠野は、⑪立花にフリーでヘディングを許す要因を宇和島東の練習どおりの動きで作らされてしまったのである。

 この先制点により「相手を探求し、その弱点を自分たちの長所を使って突く」。サッカーでゴールを奪うのに簡単かつ難しいミッションを試合開始早々に体現した宇和島東。戦前に「堅守速攻」同士のぶつかり合いと見られていたこの対戦における優劣は、実質この瞬間に決まったといっても過言ではないだろう。

 さらにここで指摘しておきたいのは「監督就任当初はバッティングで打ち込まれる野球ボールを避けるところから始まりました」と山本監督もある日の選手権前練習で苦笑いしつつ振り返ったように、宇和島東は常日ごろ十分な練習を行っているわけではないことである。

 最近でこそ石橋智之監督の実兄でもある石橋寛久・宇和島市長により整備された丸山運動公園の存在により、練習環境は格段によくなったものの、今現在でも学校グラウンドでの練習は、センバツ大会優勝1回、岩村明憲(現:東北楽天ゴールデンイーグルス)など、プロ野球選手も多数輩出している硬式野球部と半面ずつを分け合う状態。さらに平日は19時を過ぎると硬式野球部がフリーバッティングに入る取り決めがあるため、必然的にサッカー部の全体練習は終了、あとはわずかなスペースを使っての個人練習しか手立てはなくなってしまうのである。

 そんな中でも彼らが出した結果と内容。それは同時に人材不足、環境不足、指導者不足など、あらゆる「不足」と名をつけた体のいい言い訳で逃げ道を作ってきた愛媛県の高校サッカー界に、間違いなく一石を投じるものとなったはずだ。

(監督・選手コメント)
宇和島東・山本光生監督
遠野に対しては岩手県大会でのビデオを見たときにサイド攻撃が有効だと思っていたので、そこは狙いどおり。前半はトップにボールが納まり、相手も真ん中に絞ってくれたので、サイドも使いやすかったですし、⑧中平も起点になってボールを拾っていい仕事をしてくれました。ただ、DFは緊張しすぎて足もつっていましたし、不安定な面がありました。ただ、今いる子はうまい選手はいないながらも集中力が高く、粘り強くひたむきにやってくれるので、そのいい面が出たと思います。次の静岡学園戦もどれだけ粘れるか楽しみです。

宇和島東・⑧中平脩人
自分の得点は⑨梶田が僕を見てくれたので、相手DFを引きつけてからニアに走り込みました。シュートは狙いとは違いましたが、流し込むことができました。今日はペース配分を考えていなかったので、ハーフタイムでは監督から「後半は走れなくなるよ」といわれましたし、後半途中から動けなくなりましたが、それでも普段の練習でしっかり走れたことが無失点につながったと思います。

宇和島東・⑩有間潤
僕自身はインターハイで全国を経験しているので、緊張はしていませんでした。自分のゴールはこぼれ球がくると思っていたので、あとは冷静に入れるだけだったです。自分たちはうまくないし、選手権前の関西遠征でも相手の技術のほうが上だったので、チームワークで補わないと勝てない。(2回戦で対戦する)静岡学園は優勝候補ですし、高円宮杯でもベスト4なので、自分たちの力がどれだけ通用するか試したいし、自分も持ち味を出していきたいです。

遠野・松田光弘監督
僕としては守備で崩れたイメージはないですが、相手の左サイドがよくて対応が遅れ、マークがズレてしまいました。前半の3失点目が大きかったですね。ハーフタイムでは前半にDFラインが下がりすぎていたので、前から行くように指示を出しました。勝つことはできませんでしたが、80分間走り切ったスピリットは評価したいと思います。

遠野・②簗場豪史
相手とのマッチアップは五分五分だと思っていましたが、最後のところでつききれませんでした。3点差でもあきらめず最後までできたことはよかったですが、もう少し自分たちのサッカーを表現したかったです。試合前にロッカールームで激励してくれた川淵三郎キャプテン(日本サッカー協会名誉会長)には感謝しています。

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