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Match Report マッチレポート

第88回全国高校サッカー選手権大会 レポートコラム

トーナメント表 大会概要
2009/12/31

第88回全国高校サッカー選手権大会
1回戦 境-東久留米総合

清水英斗(本誌) 取材・文

09年12月31日(木)/14:10キックオフ/東京都・西が丘サッカー場/観客6282人/試合時間80分

0-0
1-0
東久留米総合
片岡(後半27分) 得点者  

ゲームのあらすじ
ディフェンス陣の頑張りもあり、なかなか決定的なチャンスを作れない両チーム。このままPK戦にもつれ込むかと思われたが、後半27分、境は左サイドに流れてボールキープした⑨松川から⑧加藤を経由して、右サイドを駆け上がった②片岡に絶妙なスルーパスが通り、決勝点をゲット。インターハイ準優勝&全日本ユースベスト8の米子北を破って本大会出場を決めた境が、2回戦に駒を進めた。

天気を味方につけた
不思議なチーム

 この試合に関しては、「勝つためのサッカー」にこだわった境と、「自分たちのサッカーをすること」にこだわった東久留米総合、という構図がふさわしいかもしれない。

 前半は自分たちのパスサッカースタイルを目指し、丁寧にビルドアップしようと試みた東久留米総合が、押し気味にゲームを進めた。特に目立っていたのは、⑭上村将仁。足裏でアクセントをつけたドリブルは、飛び込んできた敵DFをひらりとかわし、西が丘サッカー場に訪れた観客を大いに沸かせてくれた。

 それに対して境は、敵FWの⑪荻野嵩弘と⑬徳嶽裕太を、DF⑤山西理輝努と④岡﨑克也がマンツーマンでがちがちにマーク。徹底的に追い回して自由を与えず、その後ろで、DF⑥浅田龍太朗と③景山慎太郎が、カバー役として並ぶような形になった。このシステムを敷いた理由について、廣川雄一監督は次のように語る。

「県予選の米子北戦などでも、同じようなディフェンスをしていて、チームとして身についた形。このほうがやりやすかった」

 マンマークといえば、相手のキープレーヤーをつぶすという目的が真っ先に思いつくが、境の場合はちょっと違うらしい。相手に合わせた守備ではなく、あくまで自分たちがやりやすい守り方であるということだ。

 この戦法に対して東久留米総合も、マークにつかれたFW⑪荻野が中盤に下がってスペースを作ったり、サイドに開くなどして、対応を見せる。しかし、最後のところでリトリートした境の強固なディフェンスを崩すことができず、東久留米総合のシュート数は、試合の印象よりもかなり少ない、前後半合わせてわずか3本に終わった。境ディフェンスの術中にはまってしまったといえるだろう。

 また、境が勝利にこだわって立てた戦略は、マンマーク守備だけではない。セットプレーにも、研究の跡が見られた。

 FKは、基本的に敵GKへ向かっていくボールを蹴る。つまり、左サイド側なら右利きのキッカー、右サイド側なら左利きのキッカーが立つ。そして蹴ったボールに対して選手がなだれ込み、触っても触らなくてもゴールが決まる、というような形を狙っていた。

 さらに面白いのはCK。左CKは右利きのキッカー⑤山西がボールを蹴る。このとき中央では、⑩田中福彦が二アサイドに立ち、③景山は敵GKの前、そしてほかの選手たちは後ろから走り込む位置にポジショニング。この状態から、まずは⑩田中がコーナーフラッグに向かって寄っていく。この動きに敵DFがつられた瞬間、⑤山西がボールを蹴り、ポッカリ空いた二アサイドのスペースへ、敵GK前から③景山が下がりながらヘディングでボールをかすらせ、軌道を変えてゴールを狙う。

 これが右CKの場合は、二アサイド⑩田中とキッカー⑤山西の役割をチェンジ。左利きの⑩田中がボールを蹴り、二アサイドには⑤山西が立つ。もちろん、あまり繰り返すと相手に読まれてしまうので、ときには、二アサイドから寄ってきた⑩田中、あるいは⑤山西にショートコーナーでボールを渡し、ワンツーで角度を変えてクロス、という形も用意していた。

 基本的にセットプレーは、決まった手順のサインプレーを繰り返すので、あまり選手自身の判断力や、将来性を伸ばすようなものではない。しかし、勝利にこだわる試合の中では、こういった決め事が効果的に作用するのも確かだ。「自分たちより強いチームばかりと思って戦う」と語る境の廣川監督は、この勝敗を分けるポイントに徹底的にこだわった。

 一方、東久留米総合の齋藤登監督は、全く違う考え方を持っていたようだ。

「後半は自分たちが風下に立っていたので、ロングボールが遠くまで飛ばない。ショートパスを使うほうが効果的なので、パワープレーの指示は出さなかったが、彼らは④吉田純を前線に上げて、自分たちで判断してパワープレーを仕掛けた。監督の指示を待たずに、自分たちの判断で決めた。これは、私が3年間いい続けたこと。結果としてパワープレーがよかったかどうかよりも、私は彼らが自主的に判断して戦ったことをうれしく思う」

 終わってみれば、まるで水と油のようなチームの戦いだった。試合が終わったばかりの今は、どちらがいいのか悪いのか、という野暮なことはいいたくない。ただ、優勝へと近づけるチームは、境と東久留米総合のどちらの要素もバランスよく取り入れたチームなのではないだろうか。

 結果としては白黒がついてしまったが、勝つためのセットプレーとマンマーク戦術にこだわった境と、自分たちのパスサッカーをしようとした東久留米総合。この時点では両者の力は互角だったように思う。

 皮肉にも、最後に勝負を分けたのは、ちょうど後半開始から、ピッチに吹き荒れた突風だった。

 これによって境のカウンターは鋭さを増し、勢いに乗ってどんどん攻め込むようになった。逆に、東久留米総合はゴールキックがピッチの4分の1しか飛ばないような状況に追い込まれ、敵陣にボールを運ぶのも困難になった。

 聞くところによると、境が県予選で米子北を破ったときも、天候は大雨だったらしい。そうでなければ、堅守サッカーで、強豪の米子北を破るのは難しかったかもしれない。

 大雨で出場を決めたら、次は、突風の風上に立って1回戦突破。今大会の境には、天気を味方につける不思議な力があるのかもしれない。

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