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第87回全国高校サッカー選手権大会 レポートコラム Supported by gol.japan (株)カレッジリーグ エーライン事業部

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トーナメント表
大会概要
2009/1/12

第87回全国高校サッカー選手権大会

小池正人(ストライカーDX編集部) 取材・文

決勝

1月12日(祝)/14:08キックオフ/東京都・国立競技場/観客40102人/試合時間90分

広島皆実 3(2-1、1-1)2 鹿児島城西

得点者
(広)金島2、谷本
(鹿)大迫勇、野村

カラーを出し合った激戦制し
広島皆実初優勝!

 広島皆実が、一大会の記録を更新する10ゴールたたき出した⑨大迫勇也の鹿児島城西を退け、初優勝を果たした。

 試合前から、組織の広島皆実か、個の鹿児島城西か、という見方をされていたが、実際に試合自体もその通りだった。ただ、広島皆実が個人技で劣るのかというとそうではなく、むしろ一人一人の能力は鹿児島城西より高かった。一方の鹿児島城西も、すべての高校生を凌駕する能力を持つ個人だけに頼っていたかというと、もちろんそんなこともない。

 そうした、一人一人の発揮する能力が、広島皆実の場合はチームプレーに向かうことにより強く感じ、鹿児島城西の場合は⑨大迫勇を介してゴールを目指すことにより強く感じた。そして結果は、1試合を通してのコーディネート能力に長けた広島皆実が、より多くのゴールを挙げることを目標にした鹿児島城西を上回った形だ。

 まず、今大会、最大の注目を集めた鹿児島城西⑨大迫勇のプレーを振り返っておこう。

 高校選手権の決勝戦で、特に相手は準決勝までわずか1失点で勝ち上がってきたという広島皆実なのに、⑨大迫勇にボールが渡っただけでゴールにつながりそうな雰囲気になる。この試合、前半は7対3くらいで広島皆実ペースだった。中盤の争い、ヘディングの争いでは、ほとんどのシーンで広島皆実が勝ち、そこから中央へサイドへキレイにつないで数多くのチャンスを作った。

 正直いって鹿児島城西には、攻めに工夫を入れられる余裕はなかった。中盤は制圧され、高いボールだとトップへ入れても跳ね返されるか、セカンドボールを拾われる。唯一、足元のポストプレーなど、低いボールが⑨大迫勇に渡ったときのみ、可能性が感じられた。しかし、その、量的に見ればわずかな可能性は、質的にはものすごく大きく感じられる。

 前半17分、左スローインから⑪野村章悟がサイドでの1対1に勝ってニアへ低くて速いクロスを送る。これに⑨大迫勇がダイビングヘッドをヒット。わずかに左へ外れたが、ほとんどチャンスを作れなかった中、広島皆実に一瞬でもスキがあればゴールにつながる、そう感じさせるすごみがあった。

 体も強いしスピードもある。ゴリ押しでドリブルを仕掛けるしたたかさもある。そして何より、マーカーから「はがれる」コツを知っているようだった。どのタイミングでマーカーは自分から目を切るのか。どのタイミングで動き出せばボールを引き出せるか、フリーになれるか。そういうのを、刹那ごとにいちいち考えなくても、スパッと、感覚で、しかも体の向きや形や動き自体を間違えずにやっているようだった。

 3分後、鹿児島城西が先制する。⑨大迫勇だった。右スローインから、右ペナルティーエリア角付近の⑨大迫勇にボールが渡る。最初、広島皆実の守備は2人。ボールに触れるものの、なかなかクリアできないと見ると、もう2人が来た。計4人に囲まれた⑨大迫勇だったが、それでもフェイントを入れたり敵に触られたボールをブロックしたりして粘る。そうしながら、ほんの少しできた隙間から左足ビュッと振ってゴールをこじ開けてしまった。今大会10ゴール目。一大会の最多ゴール記録更新の瞬間だった。

 鹿児島城西⑨大迫勇の個人技で動き出した試合だが、23分、広島皆実の同点ゴールは対照的。精度の高い個人技を組織の連係に生かし、またそれをやりきったファインゴールだった。さらに33分の逆転ゴールは、鹿児島城西⑨大迫勇のシュートをほうふつさせるような⑩谷本泰基の個人技によるもの、と、その後は広島皆実の攻撃の多彩さが目立った。

 まず同点ゴール。自陣右サイドから⑦浜田晃が走る左のオープンへ打ち込む。⑦浜田の突破からのクロスはファーサイドへ流れた⑧佐々木進へ届く。ヘディングでプルバックした元へ⑨金島悠太がタイミングを遅らせて入り込み、鮮やかな右足ボレーで決めた。

 逆転ゴールはやはり長いボールを使って⑨金島が左サイドでキープ。少し下げたボールを⑩谷本が2人のDFのマークにあいながら、しかも一発目のシュートはブロックされたものの、素早く1ステップで右足で振り抜く。ボールは密集をかいくぐり、軽くカーブがかかってゴール右上隅をとらえた。

 後半、鹿児島城西が動いた。準々決勝でヒザを負傷した⑦大迫希に代えて⑭平原慎也を入れた。

 後半開始から出足が早くなり、中盤でボールを持てるようになっていた鹿児島城西が、17分に追いついた。ドリブル得意の⑭平原の思い切った突破からだった。右サイドで⑨大迫勇からボールを受けるとゴール前へ斜めに入っていく。ドリブルのボールタッチのリズムを変えず、そのままつつくようにゴール前へパス。これを⑪野村がダイレクトで右足を合わせた。広島皆実のDFもGKも、ブロックにいくタイミングが合わなかったり間に合わなかったりと、変拍子のようなリズムのボールタッチがうまく利用されたゴールだった。

 21分の広島皆実の決勝点、これは鹿児島城西GK①神園優が、西日をモロに受けてしまったか。目測を誤ったのか、左サイドからのクロスをカブッてしまうちょっと気の毒なものだった。

 鹿児島城西は終盤、セットプレーではそのGK①神園を上げるなど、パワープレーで1点を目指したが、試合を通して勝てなかった空中戦では、最後まで広島皆実を攻略できなかった。

 優勝は広島皆実。

 全体的なポジションバランスのよさ、などなどは、これまでの今大会のレポートでお伝えしてきた通り。どこもほころばずに1試合どころか、大会全試合をやり終えた。その辺りの具体的な部分は、これまでのレポートを読んでいただくとして、攻撃の面で目についたことを1つ挙げて、決勝の、今大会のレポートの締めくくりにしよう。

 広島皆実のパスには角度があった。例えば左サイドからセンター方向へドリブルで斜めに入ってきて、左サイドへパス、とか。ドリブルからそのままセンターや右サイドへのパスだと、敵としてもそのまま同じ方向へ追いかけ続けられるが、追いかけているのとは逆方向へパスを出されると、ひっくり返ってしまい、お手上げだ。

 スルーパスにしても、単に裏を取ることだけではなくて「逆を取りつつ裏を取る」ところまで考えているんだろう、というプレーが多かった。スッコーンと入れ替わるようにパスが通るから、見た目にもオシャレだし、破壊力も増す。特に前半のプレーではこういうシーンが多かったので、録画した人は⑨大迫勇のプレーとともに、広島皆実の「逆取り裏取りスルーパス」も楽しんでみてはいかが?

広島皆実・藤井潔監督
「光栄な1試合に選手がよく頑張ってくれた。感謝したい。鹿児島城西は素晴らしいアタッカーがいるが、3ラインをコンパクトに保ちながら相手に対して構え続けていこうと話した。(鹿児島城西の大迫勇は)前半のヘディングシュートや決められた先制点で、皮膚感覚で強さや速さがわかったと思う。2-1で終われるとは思っていなかったが、前半の2-1をできるだけ長い時間続けたいと思ったし、そのためにしっかりボールを保持し続けるのが最大の守備にもなると思い、そのことはハーフタイムに確認して後半に入った」

広島皆実・⑨金島悠太
「最高の試合でした。このメンバーで最後の試合で優勝できてうれしい。みんなにありがとうといいたい。失点してもあせらずに自分たちのスタイルでやっていこうと話していた。1点目は練習どおりの形。⑧佐々木とアイコンタクトできたのでボールが来るとわかっていた。2点目は右の②村田がいいボールを上げてくれた。城西みたいにスター選手はいないが、団結は日本一固い。それが優勝できた要因だと思う」

広島皆実・④松岡祐介
「優勝は信じられない。うれしい。最後の10分間は2日くらいに感じた。笛が鳴った瞬間、力が抜けた。(大迫勇は)1プレー2プレーで打開してしまうので、中盤でクサビのボールを切れという指示が出ていた。1対1だとやられるので、1人がダメなら2人と、人数をかけて守った。1、2失点は覚悟していたのでプラン通り。ウチも点を取れる自信があった。ボールを回すことが最大の守備といわれているので、ボールを支配して攻め続けた」

鹿児島城西・小久保悟監督
「前半、劣勢から先制したが『負けたくない』という気持ちから、リスクを負わない、放り込むようなサッカーになってしまった。後半の、同点に追いついたようなシーンをもっと作れればよかったが……。でも子供たちはよく頑張ってくれた。(大迫勇は)小学6年で最初に見たときからセンスを感じていた。順調に伸びてくれたが、正直ここまでレベルが上がるとは思わなかった。今後経験を積み、日本代表のCFになって頑張ってもらいたい。」

鹿児島城西・⑨大迫勇也
「自分の力不足。自分が決めていれば勝てた。チームのみんなに申しわけない。2点目を取って前へ前へといってしまいカウンターでやられた。(大会最多ゴール記録は)チームが勝てなかったので意味がない。(プロでは)まだ通用しないと思う。全体的にレベルを上げないと。常に点の取れるFWになりたい。苦しいこともあったが、最後にこの舞台でやれてよかった。みんなに感謝したい。いい思い出だった」

鹿児島城西・⑪野村章悟
「今までのチームと違って守りが堅かった。ヘディングでしっかり勝たないとボールをつながれるので、たとえ競り負けてもボールを飛ばさせないようにしたかった。でもそれができなかった。(大迫勇は)チームを引っ張っていく存在。大迫がいたのでこのチームは強くなれた」

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