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第87回全国高校サッカー選手権大会 レポートコラム Supported by gol.japan (株)カレッジリーグ エーライン事業部

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トーナメント表
大会概要
2009/1/3

第87回全国高校サッカー選手権大会

神谷正明(フリーライター) 取材・文

3回戦

1月3日(土)/14:10キックオフ/埼玉県・さいたま市駒場スタジアム/観客1600人/試合時間80分

四日市中央工 0(0-0、0-0、PK4-2)0 筑陽学園

得点者
 

新しい練習法実践
四中工してやったりのPK勝ち

 決着はPK戦でついたものの、両チームが見せた内容を比較すれば四日市中央工の勝利は妥当な結果といえるだろう。サッカーに判定勝ちというシステムがあるとすれば、間違いなく旗は四中工に上がっていたはずだ。

「相手のよさを消しながら、うちのよさを出していくのが今年のチーム」

 四中工の樋口士郎監督は筑陽学園をスカウティングした結果、一つの結論を導く。4-4-2から4-3-3へのシステムチェンジ。当然、相手の長所を消すための作戦だったのだが、狙いはどこにあったのか。

「相手の2トップと、トップ下の7番のリスクマネジメントを考えた。7番のよさを消すためにはトリプルボランチのかたほうがいいと考えた」

 前の3人で攻めて後ろの7人で守る筑陽学園にあって、攻撃の起点となっていたのは筑陽のエースナンバー7を背負うファンタジスタ松本翼だった。1回戦は緊張もあってそれほど目立たなかったが、2回戦では柔らかく、意外性のあるプレーで攻撃の核として抜群の存在感を示していた。そこで四中工は⑦松本を封殺しにいったわけだが、結果的にこれは成功した。アイデアを感じるダイレクトパス、鋭いFK、強烈なミドル、トリッキーなプレーで時折スタジアムを沸かせていたが、⑦松本はほとんどの時間で消えていた。

 エースを消された筑陽学園はボールを持っても前線に向かって蹴り込むだけ。それでは「予選を終えてまたよくなった」と樋口監督が胸を張る四中工のディフェンスを崩すことはできない。シュート数前半1本、後半4本という数字がそのことを如実に物語っている。

 ただ、守備ではほぼ完璧な対応を見せていた四中工も、攻撃ではそう簡単にいかなかった。⑧長谷川由が中盤の底でビルドアップの起点となり、⑭稲森睦、⑩高城友義のインサイドハーフを経由して、1トップの⑰榎信博、ワイドの⑪近藤悠矢、⑥福田晃斗にパスを送るも、なかなかボールが収まらない。右SBの⑬田中優毅も高めの位置に顔を出して分厚く攻めようとしたが、跳ね返された。

 筑陽学園も四中工と同じく守備の上手なチームだった。④牟田雄祐を中心としたDFラインとボランチ3枚で形成したブロックは非常に堅かった。四中工は15分に「あとで友達からあのシュートは入っていたよといわれました」(⑭稲森)という不運のノーゴールとなったビッグチャンスは作ったものの、前半の決定機はそれくらいだった。

 後半は相手のプレッシャーに慣れたこともあって、前半以上に攻勢を仕掛けることができた。9分に⑰榎の落としから⑪近藤が相手の逆を突くうまいタッチからゴール前まで持ち込んでGKを脅かすと、28分には⑭稲森、⑳斎藤拓也、⑪近藤と小気味よいパスの連続でサイドまでボールを運び、右クロスから⑩高城、⑰榎が立て続けにシュート。30分に稲森が鋭いFKで直接ゴールを狙ってGKの肝を冷やすと、36分には⑪近藤がペナルティーエリア内で強引な突破を見せ、終了間際には⑳斎藤がエリア内で余裕を感じさせるキープから決定的なクロスを送る。どのシーンも得点につながっていてもおかしくなかったが、「DFラインはよく守った」と吉浦茂和監督がねぎらった守備陣の粘りが勝った。

 PK戦では1年生にして四中工の背番号1を背負うGK村井泰希が大きな仕事を果たした。⑦松本がキッカーを務めた1巡目、「なんとなくわかるようになった」と最近PKのコツをつかんだという①村井には相手が右に蹴ることがわかった。⑦松本はマンチェスター・Uのクリスチャーノ・ロナウドをほうふつとさせるゆっくりとした変則的な助走からコースを狙ってきたが、「相手の足の角度を見たらわかった」という反応はドンピシャだった。

 そして筑陽学園が3巡目を終えて2人が失敗したのに対し、9月くらいからPKスポットよりも2、3メートル後ろから蹴る練習をしたことで本番では「近く感じて楽に思えた」(⑭稲森)四中工は3人連続成功。4巡目のキックは枠をそれたが、5人目がきっちりと決め、5大会ぶりのベスト8進出を決めた。

 樋口監督は今年のチームを「自分たちのやりたいことを貫いて勝てるチームではない」と評価する。だから、対戦相手のスカウティングは欠かさず、導き出した結論に沿って戦い方に調整を加えていく。この日はフォーメーションまでいじって相手の長所を消し、その上で自分たちの長所もしっかりと出してみせた。「今年の選手は応用力があるというか適応力がある」。高校生らしからぬ試合巧者ぶりを見せている四中工がその柔軟性のある戦い方でどこまで勝ち進んでいくのか、ちょっと楽しみになってきた。

四日市中央工・樋口士郎監督
「筑陽学園は能力が高いし、厳しい試合になると予想していた。PK戦も考えられる試合だと思っていた。相手の2トップと、トップ下の7番のリスクマネジメントを考えた。7番のよさを消すためにはトリプルボランチほうがいいと考えた。逆にうちは裏のスペースを利用したいと思っていた。相手のよさを消しながら、うちのよさを出していくのが今年のチーム。9月以降、PKスポットより2、3メートル後ろから蹴る練習をしてきた。PK戦で近くなったと感じるように。(GKの評価は?)身体能力が高くて、足元の技術もある。身長はそんなに高くないがいい選手。大分の西川みたいになってほしい」

筑陽学園・吉浦茂和監督
「前半は風下なのでゼロでもいい、後半に風上になったときに勝負しようと送り出した。今日は中盤のプレッシャーが厳しくて動くのが難しくなっていた。真ん中は3人でないと向こうの攻撃に間に合わなかった。セカンドボールを拾えなかったからいい形があまり作れなかった。DFラインはよく守った。県大会決勝では全員決めて優勝したけど、全国でPK戦というのは難しい。このチームでベスト16というのは十分な結果だけど、もう一つベスト8まで行きたかった。四中工は速くてしっかりした技術を持つ選手がいた」

四日市中央工・⑭稲森睦
「向こうは途中からロングボールばかりになったので、DFラインに集中を切らさないように声を出した。(PKを通常より後ろから蹴る練習をしたことは)効果があったと思う。近く感じて楽に思えた。PK戦は今回のチームでは初めて。最近蹴っていなかったから不安もあったけど、練習のおかげで楽に蹴れた。(疑惑のノーゴールについては)あとで友達からあのシュートは入っていたよといわれました」

四日市中央工・①村井泰希
「PKの自信はあった。(松本は)右に蹴ってくると思った。相手の足の角度を見たらわかった。12月くらいから止められるようになった。なんとなくわかるようになった。相手の足をみて、クセとかを見極められるようになった。これまでの経験からいっても、1本目は当たっていた。(四中工については)2年前の選手権を見てあこがれて入った」

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