1回戦
12月31日(水)/14:10キックオフ/埼玉県・埼玉スタジアム2002/観客1800人/試合時間80分
筑陽学園 1(0-0、1-0)0 富山一
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2003年度の大会で筑陽学園は初出場ながら旋風を巻き起こし、準優勝に輝いた。あの奇跡から5年の歳月が流れ、筑陽学園はようやく全国行きの切符を再びつかみ、大晦日に2歩目となる初戦を迎えた。「今日は5割もできていなかった」と吉浦茂和監督は勝利にもそのパフォーマンスに不満を隠さなかったが、選手たちにとっては初の大舞台。ロッカールームに引き上げる際、その表情には喜び以上に安どの感情が浮かび上がっていた。
「前半は立ち上がりにいい形で入れた」と長峰俊之監督が語ったように、最初にリズムをつかんだのは富山一だった。登録メンバーに180センチを超える選手が一人もいないという陣容にあって、攻守の切り替えと運動量をベースにしたパスサッカーでここまで勝ち上がってきた。ベスト16まで進んだインターハイで自信を深めた、細かいパス回しでこの日もボールを支配した。開始5分にはさっそく流れるような展開からフィニッシュまでつなげてみせた。⑧和田雄也がサイドに流し、果敢にオーバーラップを仕掛けた右SBの20谷井一貴がクロスを入れると、最後は⑩前野良平がゴールを狙った。9分にも中から外、外から中という揺さぶりから⑩前野がシュートを放った。
筑陽学園は久しぶりの全国ということで、開始当初は選手たちに固さが見られた。ある程度ボールは回せたものの、相手を崩してやろうという意図を感じるパスはほとんどなく、安全第一の実効性の薄いポゼッションが目立った。それでも球際の激しさや忠実なプレッシングで相手の攻撃をせき止め、17分には⑩原孝徳のクロスから⑫石橋翔平がフリーでヘディングを狙い、24分にもゴール前のこぼれ球から同じく⑫石橋が決定的なシュートを打つなど、随所に見せ場を作った。
優勢に試合を進めた富山一のパスワークには、インテリジェンスも漂っていた。丁寧にボールを回して相手のマークのズレを誘ったり、防護壁の薄いところから敵を攻略しようとしていた。逆サイドの選手はスキあらば相手SBの裏のスペースを狙い、ボールホルダーもそのおいしいスペースに味方が侵略したのを見届けると、きっちりとそこにボールを届けた。
その富山一のサッカーを「柔」あるいは「麗」と表現するならば、筑陽学園のサッカーは「剛」あるいは「実」といったところか。特に⑩原がパワフルなドリブルで無理やり守備をこじ開けて何度かチャンスを作ったケースが象徴的だが、筑陽学園は力強い直線的な推進力でチャンスを作った。
そんな試合が動いたのは後半13分、クリアボールを拾った⑬大坪拓海がエリア内にボールを入れると、ゴール前中央で構えていた⑫石橋がダイレクトで沈め、筑陽学園が先制点を奪った。
これで試合の流れは変わった。富山一にとっては単なる1失点以上のダメージがあった。「1点を取られてから焦ってしまった」とキャプテンの⑦松井奏多と語ったように、富山一は平常心を失ってしまった。持つときは持つ、急ぐときは急ぐという風に、緩急自在だったパスワークが、早く同点に追いつきたいという気持ちからギアが「6速」に固定されたことで単調になり、精度も低くなった。相手陣地でボールを回してはミスから失うという展開を繰り返すようになってしまい、逆にカウンターからピンチを招く場面もあった。
富山一は残り10分となったところで25鈴木勇二を投入。4バックから3バックに変更して攻撃の比重を高めたものの、ついに筑陽学園のゴールをこじ開けるには至らなかった。
「入れられてもおかしくないのがあった」と吉浦監督が振り返ったように、富山一にも得点のチャンスはあった。先制点の場面、⑫石橋のシュートは見事だったが、チャンスに至る流れの中には運の要素もあった。勝負の世界でタラレバは無意味だが、仮に先制点が富山一に生まれていれば、試合はまったく違ったものになっていただろう。勝者と敗者を分けたものはほんのわずかな差だった。
筑陽学園・吉浦茂和監督
「選手には5年前は関係なくて、初めてなのでなるべくリラックスさせようと思った。選手権は最後の大会なので力が入りすぎて、空回りするところがあった。今日は5割もできていなかった。全然走れていなかった。ハーフタイムでは、今までやってきたことをやろうといった。勝ち負けは別にして、今までやってきた内容のあるゲームをやろうといった。後半、少しはよくなった。⑫石橋がああいう形でゴールを決めるのは今までもあった形。後半は7割くらいの出来かな。これで緊張がなくなると思うので、2日目はもっといいサッカーができたらいいと思う」
筑陽学園・④牟田雄祐
「初戦は大事だといわれていたので固かったけど、声を出してやっていましたし、その中でチームワークが出てきました。ハーフタイムではいつもどおりのプレーをしろをいわれました。前半は緊張しました。富山一は一人ひとりの個人能力が高くてスピードもあったし、苦しかった。でも、今までもこういうゲームをやってきたし、気持ちの問題。気持ちの部分で相手を上回れたかなと思います」
富山一・長峰俊之監督
「前半の立ち上がりにいい形もあったし、いいリズムのときに点が取れていれば。何回かチャンスもあった。狙いどおりにはできていた。相手は狙いどおりのサッカーができないときにつないでくるから、そのときに1対1で負けないようにやった。失点したときは、真ん中のところでポジションが甘くなってやられた。負けるときはこんなもの。でも、子供たちは今年のチームでやらないといけないことを忠実にやれていた。ただ、しっかりシュートまで崩しきれなかったことで点にならなかったし、勝つこともできなかった」
富山一・⑦松井奏多
「結果的に負けましたが、十分やれました。失点の場面はスキがありました。これが終わったらサッカーが終わりだと思いながらやっていたし、仲のいいチームだったのでもっとやりたかった。ゴールへの執着心やシュートへの意欲が勝敗を分けたのかなと思います。高校サッカーしか考えていなかったので、今後のことはこれから考えます」 |