1回戦
12月31日(水)/14:10キックオフ/千葉県・柏の葉総合競技場/観衆2000人/試合時間80分
武蔵工大二 1(1-1、0-0、PK9-8)1 高知
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勝っても、負けても、たとえ全国制覇しても記者会見中に「これが勝負の世界」という一言を必ず添えていたのは、前・国見高校サッカー部監督の小嶺忠敏氏。そう、血のにじむような努力をしなければ勝利に結び付かず、同時に血のにじむような努力をしても、必ずしも勝利に結び付かないのが「勝負の世界」の厳しさである。
そして、全国高校サッカー選手権がどの時代でも人々の心をとらえてやまないのはそういった「勝負の世界」を凝縮した瞬間が多くの試合で展開されるからこそ。はたして、このゲーム、いや戦いは「死闘」という一語が陳腐に映るほどの、両者の持ち味を出し合う、かつ激しさを伴ったものとなった。
先に得点を奪ったのは武蔵工大二であった。前半22分、自陣左サイドでボールを受けた4-3-3システムの左ウイングFW⑩滝沢傑は、中央から相手ディフェンス裏に走りこむFW⑲萩原翔の動きを見逃さず、彼の動きに合わせた浮き球弾丸スルーパスを供給する。
「最近はFC CEDAC(前橋育英高校を経て来季からJ2草津に移籍する三沢慶一を輩出)や、佐久サーム(⑲萩原の出身ジュニアユース、J2湘南MF菊池大介を輩出)などの、技術を持ったジュニアユース出身選手がいることで、今まで蹴っていたところから技術を大事にしてやるようになった」という、高橋裕之監督の指導法に裏打ちされた逆回転のボールは、相手GKと1対1になった⑲萩原の足元に寸分違わず収まることに。チームのストロングポイントを余すことなく出した先制点は、勝者と2回戦で対戦する前橋育英・山田耕介監督をしても、思わず「ナイスゴール!」とうならせるものであった。
しかし、大会前にどのような起用法でも安定した実力を発揮するFW⑮新田展弘をけがで欠くなど、戦力的に厳しい高知もすぐに反撃。持ち前の運動量で敵をかき回してFKを奪い、この1年間をかけて「いろいろな高校を見て研究し、それに選手たちがアレンジを加えていった」(高橋秀之監督)セットプレーで徐々に活路を見出していく。
かくして迎えた34分、高知は左サイド深くからMF⑩野村浩平が蹴ったFKのこぼれ球を、前日の開会式では選手宣誓の大役を務めたDF④長山剛之が頭で押し込み同点に。なお、このゴールも決して偶然ではなく、味方と相手GKとが普段どおりに競り合った結果、こぼれてきたことはいうまでもない。
さらに後半に入ると両者の「勝ちたい」想いは、時間の経過と共に増幅することに。にじりよる疲労に伴う運動量の低下により、中盤においてはミスが頻発したものの、サッカーの本質である「ゴールを奪う」ためのクロスを浴びせる武蔵工大二と、GK①松本実を中心に、これもサッカーの本質である「ゴールを守る」ために体を投げ出す高知の努力がぶつつかりあう攻防は、そういった技術面の批判を補ってあまりあるものであった。
結局、試合は1-1のまま80分間を終了。PK戦でも両者5人目が外しながら合計20人が蹴り合い、10人目で明暗を分ける形で武蔵工大二が2回戦に選手権初勝利で駒を進める形にはなった。だが、高知④長山が選手宣誓で述べた、「感動と魂あふれる素晴らしい戦い」を体現してくれた両チームには筆者から感謝の言葉を贈りたい。
それだけに、勝った武蔵工大二には敗れた高知の分まで戦い抜く責任が生じるのは必然の理である。過去の三澤慶一に続き、現在も長野県ジュニアユース出身選手が複数所属する前橋育英相手に「セカンドラインで前を向けるようにインターセプトを狙う」チーム戦術と、この日見せた気迫が合致できれば、隣県の強豪相手へのアップセットも決して夢ではないはずだ。
武蔵工大二・高橋裕之監督
「今日はGK(①城立凌)の独り舞台(笑)。でも、長野県のためにもこの勝利は自信になる。攻め込まれている時間は我慢して守備をして、ボールを奪ったら速攻をかけることが今日の狙いだった。ただ、もう少しサイドへ早くパスを出せるようにならないと。終始コンパクトにやっていたのはこれから上でやるためにも必要だし、中盤でプレスをかけられないと相手の自由にやられてしまうので。前橋育英は強いが強気でいきたい。付け入るスキはある」
武蔵工大二・①城立凌
「PK戦については、1本なら止める自信はあった。最後(10人目)のPKは急きょ10人目になったが、その直前に左に蹴られる感じがしてPKを止めていたので、落ち着いて蹴れた。全国は厳しいところだが、次も自分たちのスタイルを貫きたい」
高知・高橋秀治監督
「大会前にけが人が多く出て厳しい試合だったが、前半によく追い付いてくれた。相手のMF⑪飯島秀教くんに前半やられていたので、後半は左MFの⑤野村綾彦を中に絞らせて、彼を止めることはできたのだが……。でも、選手はよく頑張ってくれたと思う」 |