決勝
1月14日(月)/14:05キックオフ/東京都・国立競技場/観客48884人/試合時間90分
流経大柏 4(1-0、3-0)0 藤枝東
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「えー!? マジかよ! 当日券もうないの?」
試合開始前、国立競技場の周りからはチラホラとこんな声が聞こえてきた。チケットは完売御礼。この選手権を通じてその名を全国にとどろかせた流経大柏のサッカーを一目見ようと、予想以上に多くのサッカーファンが訪れたようだ。準決勝と決勝の間が1週間空いたことも、メディア報道を通じて彼らの注目度が高まる結果になったのかもしれない。
そして流経大柏の選手たちも、その期待を裏切らないプレーぶりを見せる。
先制点は前半6分。⑩大前元紀がペナルティーエリア内にドリブルでつっかけて後ろに戻すと、⑧村瀬勇太が右足でゴール左隅に蹴り込んだ。藤枝東のDFは3、4人が⑩大前に引きつけられ、⑧村瀬のところには落ち着いてシュートを打てるスペースができていた。準決勝に続いて、流経大柏は幸先良く先制ゴール決める。
その後も流経大柏の連係プレー、そしてエース⑩大前の個人技にスタンドは大いに沸いた。⑩大前のステップワークは非常に速く、藤枝東のDFが体を入れていても、ピョンピョンと2ステップで体をねじ込んでしまう。まるでラグビー選手のような俊敏さだった。
さらに⑩大前のプレーでもう一つ特徴として挙げられるのが、シュートのうまさだ。難しく映るシュートを簡単にゴール隅にバチーンと蹴り込む能力は、日本の高校生としては秀逸。
実は2月12日発売のストライカーDX巻頭ページで、フランク・ランパード(チェルシー)のミドルシュートの蹴り方を少し取り上げる予定なのだが、⑩大前もそれに近い蹴り方をしているのには驚いた。シュートに興味のある人は参考にしてみてほしい。
そして今日のもう一つのポイントは、⑩大前の相棒でもある⑱上條宏晃の復帰だろう。「大会得点王を目指していた」と語る⑱上條だが、残念ながら初戦で右足首を負傷し、続く試合はすべて欠場。今日は久しぶりのスタメン復帰だった。
その彼がピッチに戻ったことにより、流経大柏は 元々持っていた運動量や2列目からの攻め上がりに加えて、前線でのポストプレーやスペースを作り出す動きが格段に増えた。⑱上條という最後のピースを加えた流経大柏は、後半さらに追加点を挙げていく。
まずは後半3分、⑩大前が左足で放ったシュートのこぼれ球を、⑬名雪遼平がゴールライン際から折り返す。これを再び⑩大前が左足でボレーシュートを放ち、流経大柏は2点目を挙げる。
後半17分には⑯比嘉祐介の低いクロスから、ニアサイドで⑱上條がつぶれ、後ろで待っていた⑩大前が左足で蹴り込んで3点目。さらに後半26分には⑩大前のCKから⑳田口泰士が叩き込んでゲームを完全に決めた。
藤枝東も決してあきらめる様子はなく、セットプレーなどでオォッと思わせる場面を見せてくれたが、さすがに4点を返すほどの可能性は感じられなかった。
「完敗だと思います。すべての面で相手が上回っていた」(藤枝東・服部康雄監督)
この選手権優勝で、全日本ユースを含めた2冠を達成した流経大柏。
静岡の高校がここまで内容でボコボコにやっつけられるのは、あまり記憶にない。両校の実力の差は明白で、"引いて守られ接戦の末に負ける"といった過去の静岡勢の負け試合とは全く異なるものだった。それほど、流経大柏の実力は圧倒的だったのだ。
Jクラブのジュニアユースからユースに昇格できなかった選手、いわばエリートラインからの落ちこぼれを集めた流経大柏。そのチームがこの年代で2冠を成し遂げたのは素晴らしい偉業だ。彼らの伸びやかなサッカーを目の当たりにして、大きな刺激を得た指導者も多く存在するのではないだろうか。
今のところ、高校卒業後、プロ入りが決まっているのは、清水エスパルスへ加入する⑩大前ただ1人だ。さらに⑩大前は、1月21日から行われるカタールU-19国際親善トーナメントにもU-19日本代表として出場する。彼がさらにどんな選手に成長するのか楽しみで仕方がない。
しかし一方で残された選手たちも、「これで終わりじゃないんで、大学に行ったらもっと活躍したい」(⑱上條)と頼もしく語っている。正直、大学サッカーについては今までほとんど観戦したことがなかったが、来季は少し足を運んでみようかと思う。
流経大柏・本田裕一郎監督
「大前には、タイトにマークされてプレーできなくなるようなら上じゃ通用しないな、という話をした。このチームを立ち上げたころは、朝の練習ではボールいじりをするのに、午後の練習は1タッチ2タッチということで、内容が矛盾しているといって納得しない選手もいた。ドリブルは縦に勝負するなら大歓迎、横に行ったりグルグル回るのなら1タッチ2タッチで回してくれということ。みんなボールをいじって遊ぶのがいちばん楽しそうなんだけど、日本一になりたいのなら、勝てるサッカーをしなきゃいけないという話をしてきた」
流経大柏・⑩大前元紀
「みんなの支えがあってここまでくることができた。上條が作ったスペースをうまく使ったサッカーができた。僕一人で決めたゴールじゃない。みんなのおかげです」
流経大柏・⑱上條宏晃
「ゲンキ(大前)とは3年間一緒に組んできたんだから、他のみんなも含めて、数試合離れていてもコンビネーションの心配は全くなかったです。本田監督は熱い人。いつもサッカーのことばかり考えている。監督に出会えて本当に良かったです。(指導に来てくれていた古沼貞雄先生については?) 僕はいつもしかられてばかりでした。でもそれがあったんで、今の自分がある。感謝しています」
流経大柏・⑯比嘉祐介
「自分のプレーができました。アシストもできてよかったです。今日は自分たちの得意なプレーである、前からのプレスができました。最後の試合なので笑って終わりたかった」
流経大柏・⑦中里崇宏
「優勝できて最高の気分です。今日は⑥海老原(慎吾)が、相手の10番(河井陽介)にマンツーマンでついて、4-3-3でやったので、自分は運動量が多くてキツかったんですが、応援がすごかったので最後までできました。自分なりに満足のいくプレーができたと思います。この1週間で疲労が取れたし、戦術上の修正ができたのが良かった」
流経大柏・⑧村瀬勇太
「(先制点のシーンは)どフリーでした。決めるしかないと思いました。県予選の決勝では同じような形を外していたので。今日は3トップの1人でプレー。監督からはどんどん仕掛けろといわれました。このチームではFWの他にも、左MF、ボランチ、トップ下などいろいろやりますが、どこもやり慣れていて、大会でも初めてやるというポジションはなかったです。いちばんやりたいのは、左サイドハーフです(笑)」
流経大柏・①須藤亮太
「4点取っても、1点取られたら意味がないと思ってやっていました。ただ、今日の試合は自分のところにもあまりボールが来なかったし、後ろから安心して見ていられました。チームとしては100点満点です」
流経大柏・⑤秋山心
「(藤枝東は)10番(河井)、11番(松田)が攻撃の中心。10番を⑥海老原が完全にマンツーマンでマークして、11番を自分と③天野で見る形。海老原が10番をうまくつぶしてくれた。(決勝前の合宿では)2時間くらいミーティングで藤枝東を研究した。なので、試合でも、相手のやり方がわかりやすかった。(90分の試合時間は)プリンスリーグでも高円宮杯でもやっていたし、トータルで10分伸びただけなので問題なかった」
流経大柏・⑳田口泰士
「(チーム3点目のゴールはファーストタッチ?)自分ではよく覚えてないけど、みんなからそういわれたので、そうなのかも。身長が高い人がみんなニアへ行って、ファーへこぼれてくれば、と思っていた。おいしかった」
藤枝東・服部康雄監督
「完敗だと思います。すべての面で相手が上回っていた。ゴールに直結する攻撃は怖かったし、実際それが失点につながった。ウチもパスを回していたんだけど、シュートまでいくことができなかった。1本のパス、球際の強さ一つをとっても、ウチの選手と流経大柏には差があった。今日はストレートパンチを受けたような感じがしています」
藤枝東・⑩河井陽介
「今日の相手は素晴らしいサッカーをしていた。1対1が強くて、テクニックもあって、そういう選手が11人もいる。プレスの速さにも、ウチは多少戸惑ったかもしれません」
藤枝東・⑰木村誠志
「個々の差が何よりも響いた。前半、最初から硬くなっていたところに、いきなり⑩大前に個でやられてしまった。(大前は)ドリブルがうまかった。2枚いてもやられたり。前半はずっとアッチのムードだったし、後半、いくぞ! というところで、また失点してしまった」
藤枝東・⑪松田純也
「練習では、流経の早いプレスを想定して、その中でも自分たちのサッカーができるようにとトレーニングしてきたが、流経は強かった。一つ一つ技術があって、すべての面で完敗」
藤枝東・②村松大輔
「個人が違った。(流経は)一人一人みんなうまかった。ふだんよりも、もう一歩早く寄せていこうとトレーニングしてきたが、2列目から飛び出されて、それが裏目に出た形に。逆にこっちは、その2列目からの飛び出しにボランチがついてこれなかった。悔しいけど、どうしようもなかった」
藤枝東・④鳥羽亮佑
「ルーズボールを拾われる時間も多かったし、運動量も相手のほうが多かった。みんな緊張よりも、試合ができることへの感謝やワクワク感のほうが大きかったと思うが、想像以上に流経は強かった」 |