準々決勝
1月5日(土)/12:10キックオフ/埼玉県・さいたま市駒場スタジアム/観客3000人/試合時間80分
津工 3(2-1、1-0)1 広島皆実
|
初めての経験となるベスト8のピッチでも、津工は“普段着”の攻撃サッカーを貫いた。広島県大会から数えて9試合連続無失点だった広島皆実ゴールに3点を叩き込んだ。
今大会で津工を見るのは初めてだが、三重県大会の決勝で彼らのプレーを目の当たりにしている。四日市中央工に4-2で競り勝ったその試合を見て思ったことは、すごく面白いな、でも勝ち上がるのは難しいだろうな、ということだった。
DFラインからロングボールをほとんど使わずにつないでいくパスサッカーで、前線には個性豊かなタレントもそろっている。
「津工のマラドーナ」と呼ばれる(それはそうと、今の高校生はマラドーナのプレーを見たことがあるのだろうか?)右サイドの⑧松葉司のスラロームドリブル。縦へのスピードが飛び抜けている左サイドの⑨飯田裕之。FWの⑩中野真人は170センチと上背はないものの、裏へ抜けることも、ポストプレーもできる。
だが、いかんせんディフェンスが“ザル”だった。三重県大会では7試合で11失点。二ケタ失点して全国大会に出てきたのは、48校の中で津工だけだ。なおかつ、相手の広島皆実は、敵の良さを消すことに関しては定評があるチーム。津工の「個」もしっかりと抑えにくるだろう。
しかし、藤田監督が「ビデオで見た感じでは、もっとプレスが厳しいと思っていたけど、実際に中に入ったら、自由にさばけていたのでビックリした」と語ったように、前半から津工は、⑧松葉などがいい形でボールを受けて、仕掛けていくことができていた。
8分、⑧松葉が右サイドで2人をぶち抜いてGKと1対1のチャンスを迎える(シュートはGK①増田卓也がセーブ)。すると16分、⑧松葉がハーフウェイライン辺りからドリブルでペナルティーエリアの手前まで持ち込むと、3人に囲まれたところで、右アウトで浮かせて中の⑩中野へパス。⑩中野がこれを左足ボレーでゴール左上スミに突き刺した。
大会初失点を喫した広島皆実だったが、28分にCKから④林正泰がヘディングシュートを決めて同点に追いつく。
それでも津工は38分、ペナルティーエリアで⑨飯田が①増田に倒されてPKを獲得。このPKを⑧松葉が「落ち着いて、GKの動きをよく見て」①増田の飛んだ方向と逆の左側に蹴り込み、2-1で勝ち越してハーフタイムへ。
後半も津工は攻撃の手を緩めない。試合メモには津工のチャンスシーンばかりが記されている。
63分には、⑨飯田が3点目を決める。左サイドから中へマイナスに持ち出してのシュート。左スミにコロコロと転がったボールは、①増田の出した手の先を通り抜けて、サイドネットに絡みついた。3-1。津工はボールを奪って攻めようとする広島皆実のプレスを、見事なパス回しでいなして、3分のロスタイムを含めた20分間を乗り切り、国立競技場のピッチに立つ権利を勝ち取った。
広島皆実・藤井監督は「津工さんは、ウチにないものを持っていた。ウチが自信を持っている守備を、相手のパスサッカーが上回ったということ。われわれ以上にベスト4にふさわしいチームだったと思います」と完敗を認めた。
広島皆実の選手たちは、津工のドリブルで積極的に仕掛けてくるプレーに対しての“免疫”があまりなかったように思う。この試合で多く見られたのが、1人の敵を2人でサンドしている、数的有利のはずの場面で突破されてしまうというシーンだ。
敵の前に立ったり、2人で挟んだりすれば、ドリブルでいける場面でも無条件で横パスを選択してしまう傾向が日本サッカーには強い。しかし、1対1でも、1対2でも津工の選手はパスに逃げず、ドリブルで2人の間に割って入ってくる。広島皆実の選手は「えっ? パスじゃないの?」という感じで対応が一歩遅れていた。
「国立を意識せず普段どおりのゲームをしたい」と藤田監督。ヒーローの⑧松葉も気持ちは同じ。「ここまできたからには、次も自分たちのサッカーをして勝ちたい」。⑨飯田は「ウチの攻撃サッカーが全国に通用することを証明できてうれしい」と胸を張る。
津工のイレブンは明日6日、国立競技場での準決勝で、追い求めてきた「攻撃サッカー」の集大成を見せる。
津工・藤田一豊監督
「まだ実感がわかない。ベスト8の中で戦えるチームを作ろうと思っていたので。広島皆実は無失点できていて、守備の堅いチームだったので、『点を取れるかな』と思っていたが、3点を取れて、選手たちには自信になったと思う。明日もまた普段着でやりたい」
津工・⑧松葉司
「ここまできたからには次も自分たちのサッカーをして勝ちたい。先制して追いつかれたけど、チーム全体が慌てずにできた。(1点目は)囲まれたときに、(中野)真人がいいところにいたので、出したら決めてくれるだろうと思って。(2点目は)落ち着いて、GKの動きをよく見て、逆を突けた」
津工・⑨飯田裕之
「試合前の狙いは2トップが縦関係になって、フラットな相手の4バックを崩そうということ。それがうまくいったと思う。(3点目は)昨日、監督と話したときに『お前は明日、左から中に切れ込むシュートを決める。ガッツポーズも見えてる』といわれて。そのときは『期待にこたえられるように頑張ります』といったんですが、まさか本当に決まるとは……」
広島皆実・藤井潔監督
「津工さんは、ウチにないものを持っていた。ウチが自信を持っている守備を、パスサッカーが上回ったということ。われわれ以上にベスト4にふさわしいチームだったと思います。いろいろなタイプのチームがいて、いろいろなサッカーをしてくる。どんな相手がきても、自分たちのスタイルを出していけるようにしたい」 |