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Match Report マッチレポート


第86回全国高校サッカー選手権大会

トーナメント表
大会概要
2008/1/5

第86回全国高校サッカー選手権大会

粂田孝明(フリーライター) 取材・文

準々決勝

1月5日(土)/14:10キックオフ/埼玉県・さいたま市駒場スタジアム/観客4500人/試合時間80分

高川学園 2(1-0、1-0)0 遠野

得点者
(高)村上、金城

 岩手県遠野市から埼玉県までは、電車を乗り継いで4時間近くかかる。それにも関わらず、初戦から多くの遠野ファンがつめかけていた。手拍子や応援コールも多いが、チームスタイルが堅守速攻のためか、どちからというと、いつも悲鳴ばかりが耳に届いていた。そんなヒヤヒヤした展開が選手たちへの思い入れを倍増させるのか、過去2戦の試合後は、野太い声の親父たちが、古くから遠野に伝わる「凱歌」を大声で歌い、勝利を祝っていた。

 試合はいきなりスタンドがどよめく派手な出だしだった。高川学園⑩齋藤達也のキックオフ・シュートがGKの頭上を越えクロスバーを叩いた。⑩齋藤は県予選から8試合連続ゴール中のエースストライカー。今大会に入って監督がこだわっている3トップの軸として、ポストプレー、裏への抜け出し、ドリブルなど多彩な才能でチームを勝利に導いてきた。この試合でも当然彼が攻撃の核となり、⑨益田拓己、⑫吉武隼人の2人とともに、前線をめまぐるしく動き回った。前半27分には⑨益田がポストプレーに入り、カットインしてきた左MF⑧原田光に落とし、さらに⑧原田は⑩齋藤にくさびを入れてDF陣をほんろう。シュートには至らなかったが、息の合ったスピードプレーで一気にゴール前までなだれ込んだ。

 さらにこの攻撃に拍車をかけたのが、⑦永野史也の出場停止で出番が回ってきた右MF⑥村上創一の質の高さだった。前半31分、右サイドでボールを持って中へ切り込み、DFを1人かわすと、右アウトサイドで縦へスルーパス。ペナルティーエリア内で⑫吉武がパスを受け流しながらDFを振り切ってクロス。そこに再び⑥村上が飛び込んで先制点を決める。

 この試合は⑥村上の起用をはじめ、高川学園・白井監督の采配(さいはい)が、さえ渡っていた。後半から3トップの一人⑨益田をボランチの位置まで下げ、オーソドックスな4-4-2に変更。相手の反撃を想定して前に比重がかからないようにスペースを消し、FWのスピードを生かす作戦に出たようだ。手数をかけずシンプルに攻めるようになると、相手の裏をついてチャンスも徐々に広がっていく。後半9分には右で⑥村上がタメを作って右SB②元村渉大のオーバーラップを促し、最後は②元村のクロスを⑫吉武がヘディングシュート。ネットは揺れなかったが、効果的な攻めを繰り返すようになる。

 そして後半23分、右からのカウンターで、⑥村上がアーリークロスを上げると、中央に唯一走りこんでいた23金城基樹にピタリと合い、決定的な2点目を挙げた。23金城はファーサイドに流れながらのジャンプヘッドだったが、全身のバネを使って右隅を狙った難しいゴールだった。

 その後もカウンターでチャンスに絡んでいたのは、やはり⑥村上と2点目を決めた途中出場の23金城。システム変更といい、選手起用といい、監督采配の妙を感じた。

 遠野もこれまで同様、前半は⑨藤嶋洸、⑩大上洋人を中心にスピードあるカウンターアタックを狙う。後半の追い上げ時には、長身DF③佐藤隆博を投入してパワープレーに出たが、スペースを消して手堅く守る高川学園に行く手をさえぎられた。得点の予感がしたのは、後半22分に25川原峻がGKからボールをかすめ取ってシュートを放ったシーンのみ。前後半あわせてもシュートを5本しか打てなかった。2年前のベスト4を超え、盛岡商に並ぶことを目指した遠野だったが、無念にも国立の前で涙を飲んだ。

 今大会2度、駒場スタジアムに響きわたった親父たちによる遠野の「凱歌」は聞こえなかったが、替わりに激励の言葉が選手たちの上に降り注いでいた。「よくやった! 来年もまた来るぞ!」

高川学園・白井三津雄監督
「相手の粘りはさすがでした。うちよりも多く走っていました。その粘りをうちも吸収して次の試合で戦いたいと思います。(2年前にベスト4だが)2年前は学校の存続のことで、サッカーどころじゃなかったです。今回再び国立にこられて感謝しています。本当にサッカーを楽しめています。一試合一試合、自分たちの良さを出しながらサッカーができています」

高川学園・④小川純
「遠野は粘りがあって厳しい試合でした。今大会は1試合2点以上取ってくれているので、それが強みになっています。一人ひとりの技術は低くないのでそれが今、かみ合っていると思います。高いレベルの試合の中で戦って、1試合ずつ成長してきていると思います」

高川学園・⑥村上創一
「チームのために貢献できて良かったです。(得点シーンは)左にみんなが集中していたのでフリーになれました。国立でもチームのために頑張りたいです」

高川学園・23金城基樹
「ゴールはとてもうれしかったです。今までとても悔しい時期があったので、チャンスをもらえたら点を取って恩返ししたいと思っていました。国立でも途中から出たら流れを変えたいです」

遠野・松田光弘監督
「相手のスピードに面食らったところがありました。1点を取られるのはノーマルなこと。中央の準備が甘くなってやられるべくしてやられたので、仕方ないでしょう。国立を逃したのは悔しいです。1年間、苦しんだチームでよくここまでこられたなと思います。(岩手県勢がここ数年上位進出していることで)プレッシャーは正直感じていましたが、私がそれを選手たちに見せると伝わってしまうので、見せないように努力しました。3年生には1・2年生にいい経験を残してくれてありがとうといってあげたいです」

遠野・②菊池智史
「悔しいです。失点しても点を取れると信じてやっていました。ここまで来たらもう一つ勝ちたかったです。2年前の先輩たち(ベスト4)に追いつけてなくて、来年、僕らの分も上に行ってほしいです。監督と握手をして3年間終わったんだなと実感しました。やり遂げたというよりも、悔しさがこみ上げてきました」

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