3回戦
1月3日(木)/12:10キックオフ/埼玉県・さいたま市駒場スタジアム/観客8000人/試合時間80分
高川学園 2(1-1、1-0)1 埼玉栄
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また一つ、楽しみなチームが選手権を後にした。逆転された後はわれを見失ってしまったが、それまで埼玉栄は非常にスケールの大きい、見ていてワクワクするような魅力的なサッカーを展開していた。もう、あのサッカーが見られなくなると思うと残念でならない。
埼玉栄は立ち上がりからボールを支配した。高川学園のプレスは決して緩いものではなかったが、どの選手も自信を持ってボールをつないでいた。高校生ではちょっと珍しいくらい落ち着いたパスワークだったので、その理由を選手の一人に聞いてみたら「1年生のときにアルゼンチンへ遠征に行った。向こうのチームとやったら、そのスタイルで負けることもあったけど、引き分けたり勝てたりした。だったら、日本の同年代のところでやってもできると思った」とのことだった。やっぱり、この年代はちょっとした自信で大きく伸びる。
また、ショートパスをつなぐだけではなく、このチームは長いボールもうまく使うことができた。ワンステップで逆サイドまで正確なボールを運ぶのは、高校生レベルではそんなに容易なことではないが、埼玉栄の選手は簡単そうに蹴っていた。⑦矢野裕貴が「このチームは左からいいボールが来る」と語っていたように、特に左から右へのサイドチェンジが素晴らしかった。
埼玉栄の先制点はそのロングボールを起点に生まれた。やや中に絞っていた左サイドバックの③堀内裕太が大きく右へ展開すると、駆け上がっていた右サイドバック④田中優がダイレクトで落とす。ボールを受けた⑦矢野は一瞬タメを作ったのち、ペナルティーエリアを切り裂くようなダイアゴナルパスを出すと、それに合わせたのは「いつもはバランスを取っているので、ああいうのはなかった。体が勝手に走り込んでいた」というアンカー役の⑤小野宏太。それはプロの世界でもそうそうお目にかかれない、実に美しい連鎖だった。
それだけに失点は非常に残念だった。それが頭を抱えたくなるようなミスから生まれたからなおさらだ。GK①柳沢昇一がボランチに軽率なパスを出したところをカットされ、そのまま決められてしまったのだ。埼玉栄はかなりDFラインを高く保っていたので、やられるなら裏に一発のパターンと思っていたが、まさかこんな形とは。どんな形でも1点は1点なのだが、その内容にはあまりにも差があり、他の記者からも落胆のため息が漏れていた。
ただ、その見事な埼玉栄のサッカーも、59分に逆転弾を許してからはすっかり息を潜めてしまった。ゴールを取り返そうとすっかり焦ってしまい、中盤の選手がどんどん前線に入っていった結果、ボールを蹴り込む以外に攻め手はなくなった。そして、中盤に人がいないのでセカンドボールを拾われ、守備→ボール奪取→蹴り込み→守備のループに。苦しいところで経験不足が顔をのぞかせてしまった。
試合後、高川学園の白井三津雄監督は「埼玉代表は素晴らしいチームだった」と相手を称えた。これは社交辞令などではなく真実の言葉である。
高川学園・白井三津雄監督
「われわれは高川のできることを繰り返し、できることをやった。今日は左サイドバックの調子がいまいちだった。普段はちゃんとできる選手だが、連戦の疲れもあったんだろう。競り勝てないし、競るポイントも違った。⑦番(埼玉栄・矢野)の対応もできていなかった。中盤で⑲番(中村浩紀)を使ったのは運動量とインターセプトのことを考えたから。昨日出た⑥番(村上創一)は攻撃力があるけど、今日は守備を意識して⑲を入れた」
埼玉栄・磯貝一直監督
「最初の失点はミスからになるけど、相手のプレスのかけ方がよかった。サポートの運動量が少し足りなかった。相手は裏を狙っていて、うちが攻めても3人残していたから、バランスを考えながら攻めてしまい、ボランチの小野がバランスを崩しても前に行くということとかができなかった。運動量も昨日より少なくて苦しかった。ビッグチャンスを何本も作ったけど、もっと決定力を高めていかないと。(両もも裏痛の)⑩砂川(太貴世)は最後まで使わずに休ませて次の試合に使うプランだった。2失点目は競りにいってカバーにいけなかった。高川は一人ひとりの守備がうまい。ファウル気味のもあったけど、手の使い方とかああいうところが全国の常連になれるところだと思う。できればもっと上にいきたかったけど、内容にも結果にも満足している」
埼玉栄・②三枝塁至
「DFラインへのプレッシャーが激しくて浮き足立ってしまった。自分たちのサッカーができたときもあったけど、勝ち切れてこそ通用したといえると思う」
埼玉栄・⑤小野宏太
「後半に点を取られてから焦ってしまった。(得点シーンは)いつもはバランスを取っているのでああいうのはなかった。体が勝手に動いていた。(自分たちのスタイルについては)新人戦から徐々に自信がついていった」
埼玉栄・⑦矢野裕貴
「だんだんとDFラインからボールを受けるのが怖くなって、いつものように足元じゃなくて、裏にボールが出るようになってしまった。ボランチとトップ下の間も開いてしまったし、前線とDFラインの間も間延びしてしまった。(高川学園対策として)左サイドが前の試合でも何度かミスをしていたので、そこを狙っていこうという話だった。このチームは最高だった。新人戦くらいから今の戦い方に自信が持てるようになって、そこからは自信が結果につながった」
埼玉栄・⑩砂川太貴世
「栄のみんなは本当にサッカーが好きで、この3年間は楽しかった。(今日はベンチスタートとなったが)昨日の試合が終わった後、明日の朝に出るかどうか決めようという話になって、今日の朝に出るかどうかはお前が決めろといわれた。出たかったけど、今日は休んで次の試合に備えようと思った。危なくなったら出ると話していた。うちは層が厚くて、誰が出ても大した差はない」 |