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Match Report マッチレポート

第86回全国高校サッカー選手権大会

トーナメント表
大会概要
2008/1/2

第86回全国高校サッカー選手権大会

粂田孝明(フリーライター) 取材・文

2回戦

1月2日(水)/12:10キックオフ/埼玉県・駒場スタジアム/観客1791人/試合時間80分

遠野 1(0-0、1-0)0 江の川

得点者
(遠)藤嶋

 試合前は必ずどんな試合になるか予想するものだが、その予想を裏切ってくれるほど愉快なものはない。出場21回を誇る東北の雄・遠野は、昨年度王者の盛岡商を破り全国大会に出場してきた。ここ3年、岩手県勢は右肩上がりの成績を残し、遠野は2年前にベスト4という成績を残している。

 対する江の川は、サッカーよりもラグビーや野球が盛んな高校。今回初めて全国への切符を手にしたが、その部員はわずか22名。もちろん今大会最少人数だ。全国的に有名な選手はおらず、堅守からのカウンターサッカーを信条としている。これらの背景だけを見ても、試合展開は大方予想できる。“遠野が攻め、江の川がしのぎカウンターを狙う”。

 果たして、その予想は見事に覆された。

 江の川は、2トップの⑨横井恵一と⑪中島快斗がスペースに流れて前線できっちりタメを作り、後ろからの押し上げを促す形で攻撃を組み立ててきた。前半22分には左サイドから⑪中島がドリブルで切り込んで、⑨横井がダイビングヘッドでゴールを襲い、前半31分には左SB②仲田好宏からのくさびのパスを⑪中島が左サイドに流し、MF⑧福本寛が抜け出て好機を作り出している。

 その攻撃を支えたのが、GK①山岡哲也だろう。前半8分には遠野の⑪大上洋人と1対1になったが、シュートを打つまでどっしり構え、シュートを正面に打たせるなど、その冷静さは堂に入っていた。フィードも安定し攻撃の基点にもなっており、DF陣が安心して後ろを任せていたのがスタンドから見ていてもわかった。

 遠野は序盤からロングボールを多用してきた。裏のスペースを狙うのはチームのスタイルでもあり、この日も2トップの⑨藤嶋洸と⑪大上のスピードを生かすという明確な意図があったが、「押し上げが遅く、サポートもなかった」と遠野・松田光弘監督が嘆いたように、連動性が失われており、一見すると無策に見えた。それは「初戦独特の雰囲気と期待の大きさで固くなったのが原因」と監督は振り返っている。

 後半に入っても同じような展開が続いた。遠野はトップ下の⑩鈴木諒にボールを集め、そこからチャンスを作ろうとするが、守備に定評のある江の川を崩せない。前半よりも押し上げやサポートに動きが見られたが、チャンスらしいチャンスはなかった。そのこう着状態を打開するため、遠野は後半30分、長身DF③佐藤隆博を投入し、パワープレーに出た。結果的に遠野が勝利したのでこの交代と戦術変更が奏功したように見えるが、その因果関係を証明するようなプレーはほとんどなかった。投入直後に③佐藤の惜しいヘディングシュートがあったものの、その後はターゲットとして登場することはなく、クロスのタイミングで飛び込めなかったり、オフサイドに引っかかったりとチームとして彼を生かすことができなかった。

 そして「ロスタイム3分」の表示が出てから、ちょうど3分が経ったとき、ゴール前の混戦から「グチャグチャッとなって横から出てきた」ボールを⑨藤嶋が左足で蹴り込み劇的な幕切れとなった。

 結果は下馬評通りとなったが、江の川のサッカーは決して敗者に値するような内容ではなかった。左右両サイドをバランス良く使い、人数をかけて丁寧に攻略していたし、シュート数でも遠野を上回っていた。GKを中心とした粘り強い守りは、彼らの組織力の高さをうかがわせた。敗戦の理由を全国大会での経験値といってしまえばそれまでだが、浮き足立つことなく最後まで戦い抜いた彼らを見ていると、ちょっと運がなかっただけなのかな、と結論づけたくなった。

「うちは22人しか部員がいないし、今後も増えるとは思えません。田舎だから(笑)」。“人数が少なくても、地方の高校でもやればできる”。青年監督・竹林純氏のはにかんだ笑顔が印象的だった。

遠野・松田光弘監督
「やるべきことを整理して試合に入れといいました。奪って早く攻めることはできていたと思います。後半は前線の選手が仕掛けることができ、後ろがサポートすることもできていました。(佐藤のFW起用は)オプションの中の一つでトレーニングの中でやっていたことです。ターゲットがはっきりして押し込むことができました。あの時間帯で得点するとは私も含め誰も思っていませんでした」

遠野・⑨藤嶋洸
「緊張していました。本来の動きより硬かったです。得点が入ると信じて戦っていました。(決勝点は)コースを狙って打ちました。これからも一戦一戦、戦うだけです。」

江の川・竹林純監督
「サッカー自体はすごく見せることができたと思います。質の高い動き、3人、4人、5人と絡むことができました。チャンスが何回かできていたので満足ですが、点が入らなかったので、まだまだですね。選手たちには40歳、50歳までずっとサッカーをやってほしいと思っています。もう一回頑張ります」

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