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Match Report マッチレポート

第86回全国高校サッカー選手権大会

トーナメント表
大会概要
2007/12/31

第86回全国高校サッカー選手権大会

粂田孝明(フリーライター) 取材・文

1回戦

12月31日(月)/12:10キックオフ/埼玉県・埼玉スタジアム2002/観客4900人/試合時間80分

前橋育英 5(2-0、3-4)4 奈良育英

得点者
(前)西澤2、笛田、木原、喜屋武 (奈)中野、吉田将、田仲、吉田篤

 決勝点が決まったのは、まさにラストプレーだった。それまでのスコアは4-4。高校サッカーの長い歴史を振り返れば5-4というスコアは珍しくないかもしれないが、その劇的度からすれば、乱打戦の中でも指折りの好ゲームだろう。

 テクニックでは前橋育英に分があった。特にU-18代表の⑤青木拓矢と⑩廣瀬智靖は出色で、彼らを軸に攻撃が展開されていた。⑤青木は足元の技術に長け、精度の高いフィードもできるスケールの大きなボランチで、相手をブロックしながらゴリゴリ進むドリブルはまるでジェラードのようだった。⑩廣瀬はDF2人が寄せてきてもパスコースを冷静に見極める目を持ち、彼の繰り出すスルーパスで何度もビッグチャンスを作っていた。前半は奈良育英の浅いDFラインの間を面白いようにスルーパスが通った。
 
  前半22分の2点目の得点シーンでは、右SBの⑥笛田祥平がFW⑮喜屋武聖矢にボールを預け前線へダッシュ。そのままDFラインの間をスルーパスと一緒に駆け抜け、ゴールに流し込んだ、圧倒的なものだった。前半2-0、前橋育英リード。このスコアと試合内容から見て、その勝利は磐石のものに思えた。

 しかし勝負のアヤとは面白いもの。リードしている前橋育英・山田耕介監督のハーフタイムでの叱咤(しった)で歯車が狂い始める。その言葉とは「2-0は最も危ないスコア。(喜屋武)聖矢が(チャンスで)決めとけば、試合はもう終わっていたんだ」という非常に妥当なもの。“3点目を取れば、もう相手は反撃する力を持っていない”選手たちはそうとらえた。

 奈良育英もこのまま何もせずに引き下がるわけにはいかず、後半からエース⑩田仲和朗を投入する。⑩田仲はその上背からポストプレーができ、サイドにも流れチャンスメイクができる選手。彼がピッチに入ったことで、奈良育英の動きが格段に良くなった。43分には⑩田仲のアーリークロスから⑦金塚渉がフリーでシュートを打つなど、いきなり決定機を作っている。

 そんな中でも前橋育英は、49分に⑩廣瀬のスルーパスからダメ押しの3点目を入れる。選手に安堵の笑みが見えた。これで勝てると思ってしまったようだ。「完全に気の緩みがありました。精神的に甘かったです」(前橋育英・山田監督)。これで安心してしまった前橋育英に対し、奈良育英は必死の反撃に出た。そして52分、53分、60分とわずか8分の間に3点を返してしまう。そのうち2ゴールに⑩田仲が絡んでいた。

 その後もスコアは動き続ける。後半69分に前橋育英・⑩廣瀬がDFを引き付けチョコンと浮かせたスルーパスに、最後は⑨木原が飛び込んで4-3。返す刀で今度は奈良育英が後半78分、左CKを24吉田篤史がGKに競り勝ち同点とした。そして2分のロスタイムを消化したラストプレー。前橋育英は⑤青木がスルーパスを出すと、ダイアゴナルで中央からペナルティエリア左に走りこんだ⑮喜屋武がダイレクトで振りぬき、決勝点を決めた。

 試合終了後、ピッチ中央に並ぶ奈良育英の選手で、泣いている選手は見えなかった。歓喜と失望の繰り返しで、何が起こったか理解できないようだった。

 4失点してしまった前橋育英・山田監督が「相手のダイレクトプレーにほんろうされました。守備が整っていないスキに、ボールを入れられる攻撃にやられました」と反省したように、ゴール前でフリーな状態を作らせていたり、数的同数で守っているようでは、今後の道は厳しくなる。2回戦までの2日間。守備の建て直しが急務となる。

前橋育英・山田耕介監督
「接戦になると思っていましたが、まさかこんなになるとは思っていませんでした。収穫は勝ったことだけです。残り5、6秒でも、もう一回取られるんじゃないかと思っていました。最後のところでボールをキープさせようとしたら、CKにさせてしまい、失点してしまいました。あそこで(キープできたら試合を)決められたはず。今日明日で、ディフェンスを修正しないといけない」

前橋育英・④米田淳人
「点を取ったり取られたりの厳しい戦いでした。自分たちが取った後、集中できなくて失点してしまいました。シュートを打たれるとき、もっと体を張って守らないといけないと思います」

前橋育英・⑮喜屋武聖矢
「(決勝点は)すごくうれしかったです。失点した後、自分たちのペースに持ち込めず、ズルズル相手のペースになってしまいました」

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