1回戦
12月31日(月)/14:10キックオフ/埼玉県・さいたま市駒場スタジアム/観客2613人/試合時間80分
近大附 1(0-1、1-0、PK4-3)1 星陵
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今夏の高校総体準優勝チームであり、今大会で9年連続18度目の出場となる名門・星陵が、わずか4度の大会参加にとどまる近大附に敗れる波乱が起きた。その結果は確かにサプライズではあったが、近大附が単に運に恵まれただけということではない。PK戦の勝利は確かに運に左右される面も強いが、80分間の試合運びからはしっかりとした星稜対策がうかがえ、その努力があったからこそPK戦まで持ち込むことができたのだ。
試合の主導権を握ったのは地力に勝る星稜。「うちはサイドが狙い」と河崎護監督が語るように、星稜はボールを奪ったらまずは右ウイングの⑨本多翔、左の⑪谷川光を見るというのが意思統一されていた。近大附はサイドの攻防で劣勢を強いられるため、山田稔監督の「DFの④鈴木大輔が守備でも起点になるし、攻撃でも起点になるので、相手のDF4枚に対して、こちらのオフェンス3人でプレスをかけるように指示した」という作戦は、ロングレンジのパス精度も高い④鈴木大輔のフィードを封じ込めるという意味では、ある程度の効力があった。だが、サイドバックからの配球を防ぐことはできず、星稜のサイドバック→ウイングのラインはフリーウェイに近かった。
ただ、この状況は近大附にとって予想の範囲内だった。「星稜にはパスを回されてもいいから、ゴール前だけは守ろうという戦法だった」と⑦笹田浩平が話したように、近大附はペナルティーエリア内に十分な人数を置き、入ってくるボールをことごとく跳ね返した。「クロスへの対応は毎日練習してきた」(山田監督)というだけあって、星稜がサイドから攻勢をかけても、クロスが入った場面で思わず身を乗り出して見てしまうような決定的なチャンスはなかった。ただ、星稜はもう少しクロスに対して中盤の選手が飛び込んでいけばゴールできていたかもしれない。エリア内につめる人数が少なく、それは同点にされた後に猛攻をしかけた後半の展開でも同じだった。
試合を支配しながらゴールが遠かった星稜だが、それでも30分に待望の先制点を奪う。ショートコーナーから⑦岡本雄介のクロスを②福田勝也がヘッドで押し込んだ。これで点を取らなければいけなくなった近大附だが、後半に入っても引いて守ってカウンターという戦術を維持。これには「1失点までは想定内。データ的にはうちは先制されると弱いけど、0-1までならなんとかなると言ってきた。でも2失点されると厳しい」という分析に基づく指揮官の意図があったのだが、つまりは苦肉の策だった。
だが、その確率の低い、単純に前に入れるだけの攻めにも星稜分析の成果が組み込まれていた。「(能力の高い)④鈴木を釣りだして、(④鈴木よりは能力の劣る)もう一人のセンターバックと勝負するようにした。それから両サイドバックも上がるのでそのスペースを狙うようにも指示した」と少しでも得点確率が高くなる方法を、指揮官は選手たちに植え付けていた。近大附はジャイアントキリングを起こすために、できることは何でもした。
そして60分、その努力が実った。⑦笹田浩平が星稜の右サイドバックの裏に「そこしかない」というスルーパスを通し、飛び出したGKと⑪高崇彰が競ってこぼれてきたボールを、⑦笹田が押し込んで値千金の同点弾をマークした。
こんなところで負けられない星稜はここから猛チャージをかけ、最後は④鈴木を前線に上げたりもしたが、ゴール前に鍵をかけた近大附の門をこじ開けることはできず。PK戦では第1キッカーの④鈴木がいきなり外してしまい、最後は3-4という結果で近大附の前に屈した。
近大附のサッカーは決して美しいといえるものではなかった。しかし、彼らは弱者が強者に勝つためにはどうすればいいのか、少しでも勝率を上げるためには何をすればいいのか、そのために星稜を徹底的に解剖し、アップセットを起こすことに心血を注いだ。この一戦が決まったときから今日の試合に至るまでの指揮官、及び選手たちの努力、そして見事にそれをやり遂げた意思は十分に美しい。
近大附・山田稔監督
「ミーティングどおり、相手の良さを消して自分たちのペースに持ち込むことができた。次のことを考えないでやってきたのがよかった。クロスへの対応は毎日練習してきた。1失点までは想定内。データ的にはうちは先制されると弱いけど、0-1までなら何とかなると言ってきた。(星稜対策は?)DFの鈴木大輔が守備でも起点になるし、攻撃でも起点になるので、相手のDF4枚に対して、こちらのオフェンス3人でプレスをかけるように指示した。こちらが攻撃する際には、(星稜の)④鈴木は高さには強いが、すばしっこいヤツなら何とかなるかなと思ったし、④鈴木を釣りだしてもう一人のセンターバックと勝負するようにした。それから両サイドバックも上がるのでそのスペースを狙うようにも指示した」
近大附・⑦笹田浩平
「言われたとおりにできた。星稜の名前には負けなかった。(ゴールは)自分たちの形だった。星稜にはパスを回されてもいいから、ゴール前だけは守ろうという戦法だった。粘り強い守備ができたし、研究して狙い通りにできた。VTRをミーティングでもバスの中でも何度も見た。思っていたように前から守備ができてよかった」
星稜・河崎護監督
「前半に先制点を取れて、こちらのペースになったと思ったが、後半に相手がマンツーマンからスペースを埋める感じの守備に変えてきて、サイドのスペースに人を置かれて、サイドチェンジをしてもなかなか通らなくなって厳しくなった。後半は単純な攻めになってしまっていた。前半のうちにもう一つ取れていれば。失点はミスだったけど、あの1失点で負けるわけにはいかなかった。PKも自信があった。④鈴木大輔が決めれば大丈夫かと思っていたが、その④鈴木が外してしまった。初戦は鬼門だと思っていた。彼らも高校生だからね。まさかが起こらないようにいろいろやってきたし。悔やみ切れないのは相手が引いてきたときに、どうやって点を取るのかトレーニングしてきたのに、後半にそれができていなかったことだ。スタートは谷川、本多にボールが入ってうまくいっていた。うちはサイドが狙いだから」
星稜・④鈴木大輔
「機能しなかったということはないが、攻撃でも守備でも最後のところでうまくいなかかったということ。うちのほうがうまかったと思う。PKは自分で蹴ると言った。悔いの残る結果だ」 |