決勝
1月8日(祭)/14:05キックオフ/東京都・国立競技場/観客35939人/試合時間90分
盛岡商 2(0-0、2-1)1 作陽 |
正直いってみんな驚いたと思う。大変失礼ながら、ベスト4の顔ぶれもそうだが、まさか盛岡商が優勝するとは……。
岩手県勢は、昨年の遠野に続いて2年連続の4強入り。古くは1961年に遠野が準優勝。68年度にやはり遠野がベスト4という記録が残っているが、以後40年近くに渡って、好成績を挙げることができなかった。ここへ来ての充実ぶりについて、斉藤重信監督は試合後にこう話した。
「東北の各チームが、協力し合って育成していこうというのが指導者間にあって、それがうまくいきつつある。仲間であり、またライバルであり、戦いはあっても、いい所は認め合いながらやっていこうという雰囲気が出てきた。プリンスリーグなど、交流試合が増えたことがユース年代の育成においては大きいのでは」(斉藤監督)
今年度の高校サッカー界を振り返ってみると、兵庫の滝川二が高円宮杯優勝。同じく近畿・和歌山の初芝橋本が高校総体準優勝、高円宮杯ベスト4。高校総体優勝は広島の広島観音で、同じ中国・岡山の作陽が選手権準優勝。そして盛岡商は東北。
数年前まで、高校選手権は国見、鹿児島実、東福岡といった九州勢が席巻。市立船橋がここ10年で3度優勝して対抗するという図式がしばらく続いていた。が、昨年度、滋賀の野洲、そして今回、岩手の盛岡商と、ともに同県勢初優勝が2年続いたことで、高校サッカー界の新たな時代への突入が明白になった。
プリンスリーグが始まったのは2003年。斉藤監督がいうようにプリンスリーグが、地域間格差を一気に縮める大きな要因になったのは間違いないようだ。
さて、準決勝以降は日本テレビ系列全国ネットで放送されたので、この決勝をご覧になった方も多いだろう。試合経過等については他のメディアに譲るとして、本誌「ストライカーDX」らしく、足ワザベースで試合を振り返ってみたい。
前半は左サイド、後半は右サイドのウイングにポジションを取った作陽⑳濱中優俊が、立ち上がり2度、軸裏を通したダブルタッチ系のフェイントで突破を試みる。成功しているのか失敗しているのか判断しかねるフェイントで魅せる。⑳濱中は、そのダブルタッチ系のコントロールやシザーズも織りまぜて楽しませてくれたが、この試合に限ったことではなく、ボールタッチにリズムの変化がない。テンポも変えられれば、もっと突破できたシーンがあったと思う
後半11分、作陽の先制点のシーン。⑨村井匠が左からのグラウンダーのパスを、右足のインサイドでトラップして、すぐ右足裏で引きながらルーレット系のターン。そのまま右足で押し出してシュート体勢へ。ボールはバーに当たったが、詰めた⑬桑元剛のゴールにつながった。⑨村井は184 センチと大柄な選手だが、テクニックがあって、しかもワザを繰り出すときは、実に俊敏。準決勝ではエラシコをやって話題になった。ゴール前で、意外性があって、しかもゆったりした動きから、キュキュッとワザを仕掛ける⑨村井の身のこなしは、実際にプレーする際には参考になりそう。
盛岡商には、チャキチャキ系のドリブラーがそろっていた。⑦松本昌大、⑪林勇介、⑨成田大樹、⑬大山徹など。同点ゴール、逆転ゴールともに、左サイドをドリブル突破してのクロスから生まれた。特に後半40分、⑨成田のドリブル。85分間を走り続けてきた選手とは思えないエネルギッシュな動きで、チャキッと仕掛けて作陽DFにしりもちをつかせた。
この試合に限らず今大会はドリブラーの活躍が目立った。スピードもあってテクニックもあって、プラス、フェイントをいくつも持っている選手が目についた。ロナウジーニョ、クリスチャーノ・ロナウド、カカ、アンリ、ルーニー……。現在のスーパースター級の選手に、いわゆる「パッサー」はいない。ドリブルで仕掛けることができて点も取れる選手ばかり。そうしたことも、大会の傾向につながっているのではないかと、ふとそんなことも思った。
盛岡商・斉藤重信監督
「岩手っこ、地元の選手だけで優勝したのは、これからの地方のサッカーに意味のあること。いくらテクニックがあってもいつでも発揮できなければ宝の持ち腐れ。走ることの大切さを彼らは理解して、苦しいが、トレーニングを積んできた。テクニックやタクティックは、いろいろ教えれば伸びると思う。だが、頑張る、人を思いやるというような大事なことを、感性に優れた高校生の時期に鍛えればきたえるほど、いい大人になってくれるんじゃないかと思っている」
盛岡商・③土屋翔吾
「優勝にはびっくりしました。素直にうれしいです。チームワークの勝利だと思います。作陽のサイドの選手は速いといわれていて、そこでやられたらダメなので、自分が止めてやると思っていました」
盛岡商・⑤中村 翔
「勝った瞬間は『よっしゃー』と叫びました。表彰式では感極まって涙が出てしまいました。自分が体を張って守っていれば、周りが乗ってくるだろうし、自分が要として、失点しても集中切らさずに頑張ろうと思いました」
盛岡商・⑥諸橋遼亮
「優勝できてうれしいです。自分たちがプレスでどんどん寄せていって、相手が焦った時間帯で点が取れたと思いました」
盛岡商・⑬大山徹
「(1点目のアシストについて)中に3枚(人)入っているのが見えて、誰かに当たればいいなと思って、足元に速いボールを狙ってクロスを入れました。林(勇介)が一度空振ったけど、押し込んでくれてよかったです」
盛岡商・④藤村健友
「後半立ち上がりに失点したが、相手のペースにいかなかったことが、逆転につながった。チーム全体で優勝を目指していました。同点に追いついてから、守るのではなく、追加点を狙ったのが大きかった。最後の大会を勝って笑って終わることができた。ありがとうという感謝の大会にできました」
盛岡商・⑧千葉真太朗
「いいところも、悪いところもあったけど国立まではこれると思っていなかった。この大会をとおして一つ大きくなれた。ハーフタイムでは、最後まであきらめずに行けといわれていた。初戦からみんなで優勝に向かって戦ってきて、最後に3年間の成果が出た。(ゴールは)打った瞬間に入ったと思いました。とにかくゴールにつながるプレーをしようと思っていました。チームみんながつなげたボール、決められてよかったです」
盛岡商・⑪林勇介
「実感がまだないのですが、優勝できてうれしい。お客さんもたくさん入っていてやりがいがありました。(PKは)狙いすぎて・・・・・・。残念です。でも外したから決めてやろうと思って、決められてよかったです。人一倍頑張らないといけないと思った。(得点は)サイドからいいボールが来て、1回目はうまく(足に)当たらなかったけど、うまく自分の前に来て、押し込みました。同点になってここからだと思った。先制はされていたが、時間がまだあって、落ち着いて自分たちのサッカーをしようと思っていた。チームが苦しい中で決められてよかったです」
作陽・野村雅之監督
「立ち上がり15分ほどは盛岡商のプレスがきつくて、そこをかいくぐれなかった。試合前、泣いても笑っても最後の試合だから、作陽らしいポゼッションゲームをやろうと話していたが、取られたりひっかかったりの繰り返しだった。その後、ようやくビルドアップできるようになり、運よく先制したが、結果、プレスが厳しくなって、後ろから組み立てられなくなってしまった。最後は走り負け、体力的に優れた選手にやられた」
──育成を考えながら戦っていると話していたが……
「トーナメントファイナルなので、当然勝ちを意識しながらも自分たちのポゼッションサッカーをやりたいというのもあった。ただ、一昨日は雨の中でのゲームだったし、その前は苦戦した静岡学園戦。ビルドアップのイメージがちょっとできていなかったかなというのはあった」
作陽・⑦宮澤龍二
「簡単なミスが多くて、つなげるところをつなげなかった。もう1点取りに行こうとは思っていたけど、向こうの勢いもあってうまくいかなかった。決めきるというという点で少し悔いは残ります。ただ、このメンバーで最後までできてよかったです」
作陽・⑪小室俊之
「得点王はうれしいですけど、優勝できなかったので。相手がPKを外したときは、いけると思ったんですが。今日は自分が走り出したら、必ず敵がついてきて苦しかった。悔しいです」
作陽・⑧立川雄大
「1点取られてから、相手のペースに合わせてしまい、つないでいくのか、前に勢いでいくのか、全員の意思統一が図れなかった。自分では大会をとおして何もできていない感じがして、決勝では何とか点に絡むプレーがしたかった。前半は得意のロングキックが味方に通ったんですけど、後半はダメでした」
作陽・⑨村井匠
「(途中出場で)とにかくシュートを打とうと思った。運よくバーに当たって、桑元がつめてくれた。でも1点取られて慌ててしまった。向こうのプレッシャーが早くて、(前に)顔を出しきれなかった。味方同士のイージーミスも多かった。前半はアップをしていてよく見ていなかったけれど、スーパーなチャンスがなく、どっちの流れでもない好ゲーム。今日は作陽のゲームはできなかった。できていたら勝っていた。パス回しができなくて適当に蹴ってしまった感じ。ボクがケガをしていたからここまでこれたというのはある。ケガをしていなかったら、もっと早く負けていたかもしれない。ケガしていたから、みんなが本当に頑張ってくれた」
作陽・③石崎晋也
「残念です。でも決勝でプレーができたことは感謝しています。バックラインからのビルドアップができず、チャレンジがうまくいったりいかなかったりで苦しくなった。ベスト8やベスト4で満足せずにこれたから、この結果になった。国立に来て浮き足立ってしまったかな。でも結果は結果です。相手は速くて、勢いにやられました」
作陽・⑬桑元剛
「(ゴールは)村井が打って跳ね返ってきて、ボールが目の前に来たので、体ごと突っ込んだ。村井にボールを当てて、ワンツーでもらおうと走っていた。作陽も全国2位になって、岡山では追われる立場になる。後輩には、まず岡山で勝ち続けてもらいたい。いろいろとつらいこともあったけど、終わってみればいいメンバーとサッカーができて充実した3年間だった」
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