3位決定戦
FIRE FOX 4-3 MAG'S FUTSAL CLUB |
ありがとう、板谷!
北 ファイル、マグ、どちらもユニホームサプライヤーが今大会の冠スポンサーのプーマ。プーマカップとしてついているだけにホッと胸を撫で下ろしたのでは?
菊地 そうだろうね。ちょっとビックリしたのは⑩板谷(竹生)が引退するという話。
北 だから⑩板谷に注目して見ていたんですけど、「板谷竹生」のフットサル人生の総決算という感じのプレーだった。
菊地 守りでは活躍し、カウンターでは上がっていって。
北 1ゴール1アシスト、決勝点も彼のシュートのこぼれ球を⑤北智之が決めているので、4ゴール中3ゴールに絡んでいる。
菊地 ⑩板谷といえば思い出すのは、彼は1対1にすごく強くて、スティーブ・ハリスさん(日本フットサル連盟理事)が「彼は相手の足元ではなく、相手の顔を見てディフェンスしている」と。
北 ファイルの選手は一時期みんな顔を見てディフェンスしてましたからね(笑)。今はそこまでやらなくなりましたけど。
彼は今年29才。調理士免許を持っているので、飲食関係でちゃんと就職をするかららしい。現在の彼はフットサルができる時間帯の仕事をしたり、アルバイトで生計を建てているそうなので。元日本代表でファイルのキャプテンが「就職」ということでフットサルを引退するというのは、トップチームのフットサルが「趣味」でやるには負担が重くなっていることを表しているんだと思います。
菊地 企業スポーツではない、というところがフットサルの大きな特徴で、企業スポーツならアマチュアでも29才でプレーしている人はたくさんいる。だけど、フットサルの活動の場と会社が別だから、こういうことが起きる。寂しい気はするけどしょうがない。
北 実力的には誰がどう見ても、「僕はFリーグに行きたいです」と表明すれば獲りに来るチームはある。
菊地 そうだろうね。
北 だけど、そこに将来の安定やビジョンが描きづらい現状があって。仕事の方を彼が選んだのは1つの真っ当な選択かなとは思います。
菊地 だと思うよ。北も29才になったらわかると思うけど、当然の考え方だと思うし。そういう人がいてくれる分、ホッとするというか。
北 ああいう熱さはフットサルの1つの魅力じゃないですか? 雄たけびの賛否両論は置いといて。
菊地 あの絶対にやられないぞ、っていうね。本当に色々と楽しませてくれたから、「ありがとうございました」という感じ。いい選手だったね。
北 3決はそれぐらいですか? 準決勝の府中-マグと同じですからね。時間の使い方という意味では。
菊地 マグはいい加減に立ち上がりが悪すぎる。
北 フラフラ~っと攻めに行ってミスして、カウンター喰らって--本当に同じ感じで3点先取されてしまうという。
菊地 何と言うか、目の前にある戦い方の間口が広いとダメなタイプ。プレデターもそうなんだけど、追い込まれて「コレをやるしかない!」となったら力を発揮するという。
決勝
大洋薬品/BANFF 3-1 府中アスレティックフットボールクラブ |
エキサイティングなゲームになった
小池 準決勝で感じたのは「大洋薬品のフットサルはあんまり好きじゃない」みたいな空気。お客さんが求めている細かいテクニックだったり、ボールゲームとしての面白さだったり、そういうところからかけ離れている、というのは言い過ぎかもしれないけど。
菊地 現在の世界のフットサルが大洋薬品のようなスタイルになってきているのは事実。本当に一瞬のスキを突き合う攻防ですよね。このチームを率いる(眞境名)オスカーが監督をするチームは大体やり方は変わらない。まず守備から入って、個人が局面で上回って、スキを突いて勝つという。
小池 このオスカーさんはいい監督なの?
菊地 良いか悪いかは別として結果は出すんだよね。勝ち続けることがプロという考え。それがブラジル人の感覚かもしれない。ただ、個人的な意見を言わせてもらうならば、その方向は好きではない。それだったらサッカーを観た方が面白いし、ボールゲームとしては全然魅力のない方向にフットサルは行ってしまっている気がする。その点はもっと意見を出し合っていくべきでしょう? 今後のフットサルのためにも。でも準決勝はともかく、決勝は府中ががんばったことで大洋薬品のよさが引き出されて、面白いゲームになった。
ファイルとは違う形で大洋薬品戦に対抗したと。
北 プレスに行って後半バテた、ファイル戦を見ていたのもあるでしょうし。
菊地 結論からいうと走力では負けなかった。ただ、個々の決定力で差がついた試合だったけども。今までフィジカルで優位に立っていただけに、そこの優位性が出せなくて大洋薬品としては苦しい試合になった。それだけに後半の「勝てそうだ」というところで、今大会で初めて感情が爆発したというか。「ウェーイ!」が出た(笑)。
北 確かに大洋薬品には⑲前田喜史、⑫小山剛史、⑤完山徹一、⑥鈴木隆二など、チームが欲しがりそうな選手が多い。肉体的に五分五分なところがあったので、大洋薬品としても「いなしてばかりでは勝てないぞ」というのはあったと思う。ただ、もう1つの強みである選手層。最初に挙げたクラスの選手は、選手層が厚いといわれる府中でも7人目ぐらいまでしかいない。
菊地 記者席からはタッチラインもベンチも見えないから、反対側の府中の応援団の近くで見てたんだけど、府中ってフットサルの街だけにやらない人も家族も来ている。誰々のお父さんとか親戚とか彼女とか、みんな知り合いで本当に「ファミリー」なわけ。関東リーグの別のチームのサポーターもワーッと集まってきて。そういう中で競馬のファンファーレが鳴ってスタートして、すごい気持ち的に盛り上がったな。
北 関東リーグ対大洋薬品という、そういう構図になってましたよね。
菊地 ああいうことをFリーグでできるのか、っていうね。そういうの作れるか、っていうね。
北 あれはいい雰囲気でした、ホント。ちょっと感動しましたもん。普段はライバルのチームがまとまって。
菊地 うん。1つの目安として、応援歌はわからなくても手拍子は合わせられますと。それがどれぐらい広がっているかが、会場の盛り上がりの目安になると思うんだけど。
北 決勝で最も印象的なのは⑲前田のFK! 1点差で、しかも攻撃のキーマンになっていた⑨宮田義人がファウルで退場してしまって、しかもPK。それを⑬石渡良太が止めるわけです。そこからボールを相手陣内に運んでファウルをもらって。左CKの近くの角度のないところからニアを狙って決めた! 一瞬何が起こったの、って。
菊地 「コースが空いてた」っていうんだよね。あれはね、バンフ東北でリカルド比嘉が決めた決勝点のFK以来。
北 狙って来ないだろうと思っていた分、観客のリアクションは大きかった。エーッっていう。
小池 でも何があっても、そこを決められる壁を作ってはダメ。
菊地 何で空けてしまったんだろう。
小池 空いてたから狙ったわけだし。
北 でもコースに通す技術が必要ですから、言うほど簡単なことではないと思いますよ。
小池 シュートのコースを塞ぐために壁を作るわけだから。限定できてないんだったら壁を作る意味がない。シュートはすごいと思うけど。フットサルだったら頭の上を越して落ちて決められることは滅多にないじゃない?
菊地 まあ、でも決めた方がすごかったっていうFKですよ。
小池 空いていたコースにビシッと蹴れるのはすごいと思う。
菊地 1-1になったおかげでゲームがすごいエキサイティングになった。ところで、オスカー監督には確認できなかったんだけど、今日の大洋薬品は突然日本人だけのセットになったり、ベンチワークも変な感じになって。何だったんだろう? 心揺さぶられる何かがあったのかな(笑)。
だけど、同点後にすぐ2点目を決めて、3点目はもうスーパープレーだったね。⑨森岡薫が反転して、ガチャガチャッと2人をテクニックでかわして決めた。府中はズルズル行きそうだったんだけど、すごく頑張って、パワープレーで大洋薬品をゴール前に釘付けにした。点が入りそうな感じはしたけど、大洋薬品もディフェンスを頑張ったね。結局ゴールが決まらなくて時間が過ぎていったけど、最後府中が「1点だけでも入れそうだ」というところだけでも、ゲームとして盛り上がっていた。
まあ、そんな感じの決勝でした。
大洋薬品は「浦和レッズ」
小池 もうすぐFリーグが始まるということで、大会全体を俯瞰して変化はあったのかな?
菊地 Fリーグの概要が発表された直後の大会だったから、必然的にFリーグに参戦するチームに注目が集まったんだけど、全日本選手権は日本最高峰の大会で何よりも選手たち自身が気合いを入れてくるから、「大会自体を楽しもう」というスタンスだったんだよね?
北 はい。
菊地 案の定、Fリーグは競技力よりも、キチッと運営して長く続けていけるかという観点でチームが選ばれているので、現状は実力度外視なわけですよ。特にひどいやられ方をした、岩手のAMV(ステラミーゴいわて花巻)と大分のエスペランサ(バサジィ大分)はまだ戦えるチームの状態ではない。当然地方ではチャンピオンチームなんだけど。
北 AMVには遠野とか盛岡商のキャプテンクラスが揃っているらしい。高校選手権で盛岡商のサッカーのレベルは低くないし、九州は日本でもかなりレベルが高い方。そういう意味では地域的には可能性はあるんですけど、いかんせん開幕まで7カ月しかない。フットサルの認知度も低いみたいですし。
菊地 そういう地域密着というのはJリーグの例に倣ってのことなんだろうけど、運営する側の人材的にも「大丈夫なのか?」という感じはある。
小池 だからチームとしては見栄を張らずに「まだ全然弱いんです。これから色々なことを勉強していきます」というスタンスにすればいいのでは?
菊地 そうそう。だけど、周りから「もっと補強しないといけない」とかすごい突き上げがあるわけですよ。関係者もメディアも感情的になってしまっている。あまりにも弱すぎるから。
北 確かに初年度のことを考えると、感情的になるのはわからなくはないですけど。10-0のゲームが多発したら、興味を削ぐことになってしまいかねないから。
小池 だけど、地元に愛されて健全経営ができればいいわけでしょう? 同じJリーグチームでありながら、サガン鳥栖やヴァンフォーレ甲府は最初は箸にも棒にもかからなかったわけだし。J1に上がれるわけはないし、J2でもお荷物で年間10勝にも満たないと。Jリーグは企業スポーツから脱却して、地元密着のクラブを作ろうというスタンスでやってきた。「Fリーグに選ばれたから強くなきゃいけない」。それだけではないという話を、JFAは経験的に知っていると思う。
北 だけど菊地さんが危惧していたのは、そういう長い目で見る人がどれだけいるのか? ということ。
菊地 そうだし、とりあえず「補強はするでしょう」ということをお偉いさんが言っているんだけども、プロではないし職がないと花巻、大分には行けないでしょう? そんな中でどれだけの補強ができるのかは甚だ疑問なわけ。関東から補強できても2、3人なのでは。そうすると将来的に強くなるための見込みを見せていかないとね。
北 現時点で彼らは日本の頂点に据えられたわけだから、飛びぬけて強いプロチームと同じ土俵で戦わなければいけないというのは……。
菊地 まあ、まだ動く前の段階だから、何とも言えないんだけど。下3つはどこというのは最初からわかっているのは。
北 チームの予算的には何人かはプロ契約できる、フットサルに専念する選手を雇えるように組んであるらしい。それで軸になる選手を補強して、ということになるんだと思います。
大洋薬品の③北原(亘)が言っていたのは、お客さんはウチの大勝を望んでいないと。確かにそうで、この日の興味の対象もプロチームに関東のチームがどれだけやれるのか、あわよくば大洋薬品がやられないかということだったと思う。でも現時点では2点差ぐらいだったけど、大洋薬品はこれまで以上の強化をFリーグ開幕までの半年間するわけで、まだまだ伸び白はある。Fリーグが始まってみて、5-0、6-0のゲームばっかりだったら、これは面白くないなあと。
菊地 ただ、勝ち続けることで人気チームになる可能性はあると思うよ。フットサルを初めて見たなんて人は、とにかく強いチームに肩入れするということがあるから。いきなり最初に大洋薬品を見たら、速くて強くて迫力はすごくあるわけじゃない? そういう意味で言えば大洋薬品が勝ち続けていけば、それはそれでNo.1チームになっていく可能性は高い。浦和レッズのように。
北 メンバーの構成から戦い方までソックリ(笑)!
菊地 強いんだから別に悪いことではない。だけど、対抗するチームは出てきて欲しい。1つがダントツで勝ち続けるのは面白くない。Jリーグだってガンバ大阪あっての浦和レッズなわけでしょう? ガンバ大阪が出てこないといけない。
北 そういう対抗役になれるチームは初年度に関しては限られている。
菊地 これはFリーグ成功の生命線だと思う。カリスマ・甲斐修侍(現カスカベウ東京、Fリーグではペスカドーラ町田に名称変更)に掛かっている(笑)。 |