
清水 さて、次に対戦するベトナムについてですが。宇都宮さんはこのチームの試合を観戦して、どんな印象を持ちましたか?
宇都宮 アジアのアイルランド(笑)。
清水 出ましたね~キャッチーな言葉が(笑)。それはどういうところが?
宇都宮 フィジカルや高さはないんだけど、とにかく根性サッカー。ナショナルチームであれだけの感動を覚えたのは、2002年のアイルランド以来ですよ。僕は。
清水 おぉ~ベタ褒めですね。たしかにアジアカップは何試合か見ましたけど、あれだけ走るチームはなかなかなかったですね。
宇都宮 ただね。試合開始から走るから、後半の途中になると電池切れが明らかなんですよ。本当に根性ですよ。ド根性サッカー(笑)。「ベトナム-カタール」戦でも、カタールのシュートがバーやポストにばんばん当たったじゃないですか。それを引き寄せる、妙な力ってありますよね。
清水 確かに。あの試合を見てたら、なんだか末恐ろしくなってきましたよ。「何でカタールのシュートはこんなに入らないんだ?」って。
宇都宮 ベトナムって、元々ホームゲームには強いんですよ。前回のワールドカップ予選でも韓国に勝っているし。だから要はね、ベトナム戦争でもそうだったんだけど、この国はホームでやたら強いんですよ。密林に追い込んでのゲリラ戦法というか。そういうところに彼らは長けているんだと思いますよ。
清水 ハノイという街もそんな感じですよね。本当に人だらけ、バイクだらけのカオスというか。その中で育ってきている選手なんですよね。
宇都宮 やっぱり今回4カ国開催の中で、いちばん混沌としている雰囲気があるのはベトナムだと思うよ。あのね、これは重要なことなんだけど、ベトナムって太ってる人がいないんですよ。
清水 おぉ。いわれて見れば確かに。ドイツではほとんどが肥満人だったのに(笑)。
宇都宮 ぜいにくを付ける余裕がない。頑張って頑張って、何とか暮らして行こうという人たちばかりなわけでしょ。アジアでも中国や韓国に行けば、都市部では太ってる人を見かけるんだけど。
清水 それをどう捉えるか。メンタル的に、ベトナムはぜいたくに溺れていないハングリーさを持っているのではないかと。
宇都宮 そうそう。何だかんだいって、中東の選手ってその辺のハングリーさって忘れてると思うんですよ。みんな産油国でしょ。セバスチャン・スリヤだってパスポートを買われるようにして入った選手だし、南米にいたころは貧しかったんだろうけど、今は車3台くらい持ってるだろうしね(笑)。
清水 ハングリーさを忘れても仕方がないかも(笑)。
宇都宮 ハングリーランキングでは、特にこのグループBではベトナムがダントツですよ。大会全体を見ても1位2位を争うかもしれない。
清水 観客がベトナムを応援する姿もすごくピュアで、心打たれるものがありますよね。
宇都宮 そうなんです。彼らの姿は、昭和30年代の日本において、街で唯一灯りの見えるスタジアムに、父親に手を引かれて足を運ぶ家族のようですよ。スタジアムに行くこと自体に、ものすごい高揚感があったわけですよ。ところが今の我々の場合、「今日は勝ち点3が必要だ」とか、「カタールは守備で来るかな」とか、そういう邪念というか打算というか(笑)。
清水 本当に。彼らを見ていると、僕がサッカーを見ている目ってすごく濁ってしまったんじゃないかって思うくらい(笑)。
宇都宮 かけ声も「ベトナム!ベトナム!」くらいで、応援のバリエーションもない。さらにレプリカユニフォームを着る習慣もなければ、横断幕を掲げることも知らない。でもね……なんか心が洗われるようなんですよ。
清水 そうですね。ベトナムという国にタイムスリップしていると、忘れてはいけなかったものを思い出させてくれるような感じがしますよ。グループリーグ最終戦が楽しみです。どんなドラマが待っていることやら……。
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| ベトナムを応援するサポーター。今日もスタジアムは満員 |
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