
清水 今日2得点を決めた高原直泰なんですけど、実は熱があって体調不良だったらしいですね。途中交代も理由はそのためだったとか。
宇都宮 そうそう。今日は記者会見でも高原について質問が飛んだんですよ。普段オシムは特定の選手についてあまり言及したがらないでしょう?
清水 そうですね。意識的に避けてますよね。
宇都宮 だけど、「高原はあれだけ嗅覚を持った選手だけど、他の選手と比べてどうなんだ?」って質問があったんだけど、「それが彼がドイツでプレーできている最大の理由だ」って答えてるんですよ。今回は高原という個人を非常に認める発言をしてるんですよね。
清水 仮に高原の体調不良が、ベトナムで流行している「デング熱」によるものだったりしたら、えらいことになりますね。
宇都宮 オシムは、「高原がいなくても他にいくらでもやり方はある」って言ってたんだけど、他の選手が100%高原の穴を埋められるとは、たぶんオシムも思ってない。ちょっと強がりが入った意見だったように僕には思えました。
清水 確かに今日出てた巻誠一郎もゴール以外の仕事はよくやっていたと思いますが、高原の役割を果たしてくれといったら……逆に不安にさせられましたね。チャンスを外しているし。
宇都宮 ここ10年20年のスパンで見ても、なかなか日本にいなかったストライカーを僕らは目の当たりにしてるんじゃないかと。例えばすごいときの久保竜彦とか、全盛期のカズやゴンとか。ひょっとしたら釜本さんの時代まで戻らなきゃいけないかもしれない。
清水 今の高原にはそれだけの価値があるかもしれませんね。やはり練習を見ていても、ゴール前でシュートに行くときの迫力が全然違うし。アクロバティックというか…どんな体勢からでも強烈なシュートを打つというか。
宇都宮 今日の2点目なんて、決まるとは思わなかったですよね。加地亮が何となく3人味方がいるところに上げた感じのクロスだったし。でもそれが意表を突いて良かったのかもしれない。
清水 ショートバウンドを胸かお腹あたりで抑えて、後ろ目に出たボールに対して腰を回してボレーシュート。難しいプレーでしたよね。
宇都宮 あれができるのって、久保ぐらいだと思ってたんですよ。すごいときの。今は19番を付けているけど、日本はここに来て9番が似合う選手を得ようとしているんじゃないかと。
清水 高原はワールドカップであれだけ酷評されたのに、ドイツで何が起こったんですかね?
宇都宮 あなた、ドイツにいたわけでしょ。どうだったの? そのあたり。
清水 実は僕がフランクフルトにいる間、高原はずっと怪我で試合に出てなかったんですよ。「日本-ブラジル」戦で怪我したやつです。 だから僕はスタンド観戦してる高原の姿しか見てないんですよ。
宇都宮 あ~なるほどね。
清水 ただ、フランクフルトはドイツでは珍しいタイプのチームで、後ろからキッチリとショートパスを繋いでいく丁寧なサッカーをするチームだったんですね。監督の志向もあって。だから高原がフィットする可能性は高いと思ってました。前所属のハンブルガーSVは守ってカウンターのチームだったので、フランクフルトとは対照的だったんですよ。高原には相当きつかったはず。
宇都宮 なるほど、移籍が良かったわけだ。高原はヨーロッパに遠征したときも、けっこうゴールを決めてるんですよね。ラトビア戦もボスニア戦もそうだったし。ワールドカップ前のドイツ戦もそうだったよね、2ゴール決めて。
清水 今日は2トップだったことも高原には良かったかもしれませんね。巻が相手のDFを引っ張ってくれましたし。
宇都宮 巻が先発したのはアレッと思ったんですけどね。先発は2日前の練習で高原と組んでいた矢野貴章かなって思ってたんですが。だけどやはりオシムの信頼は高かったということだし、巻は高原がいい状態でプレーできるような仕事をしてくれましたよね。
清水 僕はむしろ、2トップは高原と巻で行くだろうと思ってたんですよ。もしくはカタール戦での山岸智の位置に佐藤寿人が入って高原の1トップで行くか、そのどちらか。矢野ファンの方には申し訳ないんですが、ちょっとコンディションや連携面の仕上がりが良くないように僕は感じたんですよ。練習を見ている限りでは。
宇都宮 なるほど。巻は数々の修羅場をくぐっているわけですからね。ワールドカップの大舞台にも立ったし、アウエーのサウジアラビア戦やイエメン戦のときもずっとスタメンで出てたわけだし。酷評されたにも関わらず。そういうタフさは買われたんでしょうね。
清水 ただ練習を見ていると、巻は明らかに調子が良さそうに見えるのに、なぜかシュートがことごとくバーに当たるんです。オシムとしても、こういう状態のFWを使うのは怖くなかったのかな~と思ったり(笑)。
宇都宮 損な役回りではありますよね。なんか鈴木隆行と柳沢敦を足して2で割ったというか(笑)。タイプは違うけれども。高原が際立つのは、巻の泥臭さがあってのことだったんだから。周りを引き立てる役と、自分が決める役、その両方を高原に負わせるのは相当な負担だったと思うし、そういう意味では2トップにして正解だったんでしょうね。
清水 まぁだからといって1戦目の山岸智が悪かったかといえば、僕はそうは思いませんけどね。シュートに関しては……反論できないところですが。
宇都宮 山岸は山岸で、チャンス作ってたしねぇ。そこだけ取り上げられて叩かれるのはかわいそうだよね。これは色んな人が言ってることだけど、巻にしろ山岸にしろ羽生直剛にしろ、すごくスペシャルな選手じゃないわけでしょ。むしろ「なぜこの人が代表? しかもジェフばかり」と言われかねない選手なわけで。
清水 実際、言われていますよね。
宇都宮 「オシムがジェフの選手をひいきしている」という見方をするのは簡単なんだけど、彼らはある局面で何かしらの効力を発揮するからこそ、代表に呼ばれているんだから。
清水 そうなんですよ。「なぜJリーグの下位チームから4人も選ばれるんだ?(7月14日時点でジェフ千葉は14位)」みたいなことを言われがちですが、数字だけでサッカーをあれこれ討論することに、僕はすごく違和感を感じてるんですよ。内容をあまり検証していないような気がするんです。実際ジェフの4人の選手については、これだけオシムが勝利にこだわっている真剣試合の中で、すでに全員が出場を果たしているわけですから。ただ連れてきたわけじゃないのは間違いない。
宇都宮 そうだね。巻にしても羽生にしても山岸にしても、高原を生かすために選ばれた選手起用なんだろうね。我々は、高原という優れた大砲を手に入れた。そしてそれを磨く人、視界を良くする人、火をつける人……。
清水 あとは狙いを定める人、中村俊輔のような感じですね。
宇都宮 そうそう。それぞれが高原という大砲を中心に役割分担をして、今のチームになっていると。
清水 なんかそう言われると、すごくイメージができてきましたよ。日本代表という船に大砲があって、航海士や狙撃主や機関士といったクルーがその周りで働いている姿が。
宇都宮 まさにそれでしょ。ただね、大砲を手に入れるということは、逆に弱点ができたことでもあるからね。
清水 高原が怪我などで、欠場した場合ですね。
宇都宮 あとは、完全に抑えられてしまったときとか、汚いタックルでひたすら削られたときとか。
清水 今日のUAEのラフプレーも、見ていて腹が立ちましたよね。
宇都宮 でしょ? レイトタックル多かったですよね。あんなのアジアでは当たり前ですから。ただ、今回オシムは明らかに結果を求めてきているのを感じるし、この高原依存のチームについても、言葉には出さないけど容認しているんだと僕は思いますよ。
清水 なるほど。たしかに体調不良の高原を出場させたり、全体練習に加わって間もない駒野友一を使ってますしね。
宇都宮 そうそう。それが完璧に現れたのが、昨日の試合だったんじゃないかなと。だから体調不良ではあるけど、次のベトナム戦でも高原を先発で使うだろうと僕は思いますよ。
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