
清水 では次、2人目の遠藤保仁のキックですが。
菊地 遠藤のPKは、みんながあこがれる蹴り方だよ。ボールをほとんど見ないで、ずっとGKの動きを観察しながら蹴っている。
清水 やられたGKのショック度は高いですよね。小馬鹿にされているような。
菊地 助走は最初ゆっくりとアプローチして、途中でさらにペースダウンする。ここでGKがじれて先に動き出したら、逆の方向に蹴るんだけど、もしもGKが動かなかったら、そのまま強いボールを蹴るようにしている。
小池 オーストラリア戦を見てもさ、日本の選手は、体勢も軸足も右を向いて左に引っ張る「逆蹴り」が多かった。2人目の遠藤から4人目の高原までがそうだった。俊輔にしても、逆蹴りじゃないけど引っ張りだったでしょ。韓国はそれを研究していたんだと思う。だから韓国のGK(イ・ウンジェ)は、5人目の中澤まですべて引っ張る方向に飛んでいたんじゃないか。
だけど、遠藤のケースでは動くのが早過ぎた。遠藤が助走のスピードを途中で落とし、GKはそれにじれて先に動いてしまった。その動きを冷静に見ていた遠藤が、右側に流してGKの動きの逆を取ったんだと思う。
清水 だけどGKが動いてくれなかった場合、強いボールを蹴ることができるのは左側(引っ張る方向)に限られますよね。右側(流す方向)に強く蹴るときは、体を開いて踏み込まなきゃいけないんで。遠藤のようにギリギリまでGKの状態を観察していると、そういうアプローチはできないはず。つまり、遠藤のPKを止めたかったら、「ギリギリまで動かず、蹴った瞬間に(左側)引っ張る方向に飛ぶ」というやり方が有効な気がしますが。
小池 いや、だから、GKが動かなかった場合も想定して、両方とも蹴れるように、右サイドへ蹴る体勢で入ってるんじゃないかな。最初から右へ蹴る体勢なら、ある程度右へも強いボールが蹴れるし、インパクトで右足首を返すだけで引っ張れるワケだから。
だから、右足キックの人の場合、GKに右を意識させておいて左へという逆蹴りは、わりと簡単なんだけど、引っ張りを意識させておいてキックの瞬間に右へ流すのは相当難しい。そういう意味でいうと、僕が今まで見た中でこの蹴り方がいちばんうまいのは、とんねるずのノリさん(木梨憲武)なんですよ。彼はそれを見事にやってしまう。
清水 たしかに。ノリさんはうまかった。最近はあまりテレビで蹴ることはないですけど、またなんかの企画で見たいですよ。
さてさて。次は3人目、阿部のPKですが。
小池 さっきもいったとおり、韓国のGKは左側(引っ張る方向)に飛ぶと、おそらく決めていた。だって、最終的に日本の5人目まで全部引っ張りの方向に飛んでいたワケだから。阿部はその方向に蹴ったんだけど、これはコース勝ちだね。反応されようが読まれようがなんだろうが、サイドネットにビシッと蹴れば、絶対に取られないという自信のキックだと思う。
清水 なるほど、ジネディーヌ・ジダン系PKですね。
小池 駆け引きという意味でいうと、4人目の駒野がうまかった。ここまでの韓国のGKの様子から、日本の逆蹴りパターン=引っ張りパターンを予測しているようなフシがあった。だから、オーストラリア戦では逆蹴りをやった駒野は、それに気づいていて、逆蹴りじゃなく、そのまま右側に流し込んだと思うんだよね。そして5人目の中澤も同じやり方で決めた。
清水 う~ん。たかがPKとあなどるなかれ、複雑な駆け引きがありますね。そして最後は6人目、外してしまった羽生ですけど……。右に飛んだGKの残り手に防がれてしまいました。
小池 あれは駆け引きも何もありゃしない、中途半端なコースに中途半端なボールを蹴っちゃったPK。さすがに韓国のGKも、5人終わって、逆蹴りしてこないということで、考え方を変えるだろうし。
菊地 助走のスピードを変えたんだけど、最初速く、ゆっくりにして、またスピードを上げたから、元のタイミングに戻っちゃったんだよ。自分も蹴りにくくなるし、GKもタイミングばっちりで飛んでるし、しかもコースが甘い。これでは止められて当然だよ。
清水 羽生は「PKを蹴りたくなかった」なんていってるぐらいですから、ふだんからあまり練習もしてなかったんでしょうね。ただ、PKを外して泣き出してしまうほど3位決定戦に責任を感じて取り組む姿はグッとくるものがありましたよ。僕は好きですよ、羽生。PKはもう蹴らなくていいけど……(笑)。
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