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AFCフットサル選手権大会日本2007 マッチレポート


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大会実施概要
2007/5/21

AFCフットサル選手権大会日本2007 決勝・3位決定戦 対談レポート

山戸一純(フットサルネット)、菊地芳樹(本誌)、北健一郎(本誌) 構成

3位決定戦
ウズベキスタン5-3キルギス
決勝
イラン4-1日本

先制点が勝負の分かれ目に
パワープレーするも打開できず

(敗戦のショックを引きずった雰囲気の中、対談がスタート)

菊地 さて、それぞれの感想からいきましょうか。まずは山戸さんから。

山戸 自分でも意外なんですが、この敗戦を淡々と見ていましたね。自分が思い描いていた「怖いイラン」が今日はいて。例えばドリブルのストライドが日本より一回り大きかったり、プレーのリーチの広さだったり。日本にはついていけないだろうなっていう。その中で⑨小野大輔なんかが善戦していたのがすごい驚きであり、そこに日本選手の成長は感じましたが。だから、「悔しい」というよりも、「収まるところに収まったな」というのが正直な感想です。

菊地 昨年、ウズベキスタンで勝ったときは見ていないんだけど、一昨年の2次リーグで1回勝ったのは見ていて。現象的には、イランの成長が1回滞っていたところに、日本がそのまま実力をつけていって一昨年、昨年と勝ったんだと思う。ただ、今回でまた、日本とイランの力関係は逆転したと。
  結果的にはいつもの決勝の光景なんですよね。先に1点取られちゃうとキツイ、という質のゲーム。お互い守備面でスキを見せちゃいけないというのは、前半始まってすぐにわかるわけですよ。そこで日本がミスから点を取られちゃったことで、イランはきっちりと守った。1点取られた時点で、「これは厳しいぞ」と。見た感じの雰囲気で、追いつくかもしれないけど、逆転は厳しいなってなるもんね。

山戸 なるほど。私はイランが上だったときに見ていて、日本が追い抜いたときには見ていない。だから受ける印象は「いつも通り」だったんですね。

菊地 北としてはどうだったの? 昨年の優勝を見ているわけじゃない?

  前回大会とのイランの違いとしては、⑨シャムサエーが味方を使うようになったこと。大幅な伸びではないんですけど、これってすごい大きいことだと思う。昨年までは⑨シャムサエーをコントロールできる人がいなかったんですけど、今大会から復帰したホセイン監督は絶対的なエースの彼をオトリとして使うことができた。そういう采配的な部分が勝因としてあったのではないかと。

山戸 1点目も②鈴村拓也が⑨シャムサエーのマークについていて、そこに⑤比嘉リカルドが引きつけられて、空いたところに出されて決められましたからね。

  ただ、⑨シャムサエーは②鈴村と1対1のマッチアップで完全に相殺されていた。ほとんどのシュートを抑えていたし、打たれたとしてもコースは限定できていた。だから、⑨シャムサエーには②鈴村1人でよかったと思うんですよ。2人も3人もついていく必要はなかった。

菊地 試合前に⑨シャムサエーと②鈴村が熱く抱擁していたから、そのまま試合中も抱擁してろって思ったんだけど(笑)。⑨シャムサエーに関していえば、彼も選手として分岐点に来ていた。アジアでもトップレベルになると抑えられていたから、プレーのスタイルを変えなければいけないと感じて、今回の起用法に納得したんだと思う。彼にはシュートまで持ち込む怖さと、決めるパワーはあるから、相手は誰かブロックにいかないといけない。そこからのラストパスをイランが生かしたところに、優勝の要因があったんだと思う。
  ボクはこれまでの個人を前面に出すイランを見てきただけに、⑨シャムサエー、⑩ヘイダリアンの個人の強さを警戒してたんだけど、今回のイランはチームとして強かったのが改めてわかった。総合力の勝利だったね。

  昨日、「毎試合戦術を変えている」というイランが、日本戦では何をしてくるか予想しましたけど、おおむね当たっていたんじゃないですか? ウズベキスタン戦では前からプレスしてきたチームが、今日は自陣まで引いていたし、⑨シャムサエーをピボの位置にがっつり張らせてきたことも。

菊地 見事にやられたというべきかな。でも、日本にも前半はチャンスがあった。1対1のシーンもあった。その中で決まってもいいところもあったんだけど、決められず、前半で追いつけなかった。その中でディフェンスが耐え切れなくなって、追加点を許してしまった。だって、2点目のシーンなんてイランがチャンスと感じての力技の連続だったじゃない?

山戸 どんな感じでしたっけ?

菊地 イランの右CKが何本も続いて、マークがキツくない遠目からバッコンバッコン打つわけですよ。それを①川原永光が弾いて、ゴール前のイラン選手が詰めるという、危ないシーンが何度もあった。

  あれも⑨シャムサエーをオトリにしたプレーの1つだと思う。山戸さんが⑨シャムサエーはアップのときからGKの弾きやすい高さに打っているといっていたじゃないですか? だから、あれはGKにぶつけるための「練習」だったんじゃないかと(笑)。

山戸 確かにそうかもしれませんよ。あの場所からだったら、⑨シャムサエーは少なくともシュートを打つところまではいける。で、GKを弾いたところに、迫力ある選手が突っ込んでくるっていう。

菊地 ゴール前の1対1で、体をくっついているところの小競り合いで、体をキメられちゃって、1歩前に出られたら、ああいうシーンは終わりですから。
  これから⑨シャムサエーのラストパスの精度が上がってきますよ。そうすると、これまた強いね。

山戸 試合前のシュート練習を見ていたんですが、日本とイランではシュート力がかなり違う。イランの選手のシュートはいい音がする。「ドッ」っていう。それに対して日本は、まずシュートがそもそも枠にいかない。いいシュートを打てる選手は、②鈴村、⑤比嘉リカルド、⑮北原亘と結構限定されていて。今になって思うと、「音が違うな」って笑ってたことが、試合の結果につながっているじゃないかと思いますね。

菊地 いつも「個人の差」というところが挙がるんですが、それは急激なレベルアップは相当大変なわけですよ。現状では個人として追いつかないので、それを踏まえて何ができるかというところなんですけど。だから、個人以外の組織の部分で上回ろうとしているんだけど、イラン戦に限らず、まだまだディティールの甘さは目立つよね。
  日本は2点差にされてから、10分以上があったけどパワープレー。これは試合の状況を考えると仕方ないかな。

  すごい重たい2点差でしたから。2点リードして引いて守るイランに対して、日本の攻撃が手詰まりなっていただけに、これは普通にやってたら入らないぞという雰囲気があった。
  パワープレーの前のタイムアウトが終わったあとに、サッポ監督は⑯岸本武志を入れた。彼は唯一の左利きで、彼を組み込んだパワープレーはすごい練習していた。お、サッポ監督、思い切ったことするなという感じだったじゃないですか?

菊地 これまでのサッポ監督の采配からすれば、あんなに緊迫した場面で初代表の⑯岸本を使うなんてほとんどありえないからね。記者会見で「パワープレーのときには使いたい」といってたけど。

  だけど、⑯岸本がパスミスを1本したこと、最後尾で⑨シャムサエーとマッチアップする場面があったことで、サッポ監督はビビッてしまったのか、すぐに引っ込めちゃった。これがその後のパワープレーの停滞感にもつながったと思うんですが。

山戸 イランはパワープレーを守るのがうまいんですか?

  うまいと思いますよ。

山戸 昨日のウズベキスタンのパワープレーも拙く見えたんですけど、あれもイランのディフェンスがうまかったんですかね?

菊地 やっぱり必然的にワンプレーの幅が違うわけじゃないですか? だから敵からすると、パスコースが空いていてもインタセプトされるんじゃないかと思ってしまう。だから、横パスを回し続けるような感じになってしまうのかもしれない。

  昨日からイランのパワープレーに対するディフェンスを見ていて思ったのが、真ん中から来られるのは“ウェルカム”なんですよ。基本的にはGKの選手が真ん中でボールを持ってるんですけど、その選手は好きに遊ばせる感じがあって。昨日も⑩アフメドフはドリブルで突っ掛けていったり、今日も⑤比嘉のミドルが決まりましたけど。ただ、サイドに振ると、一気にガッと寄せにいく。それでカットしてロングシュートというパターンがあった。

菊地 確かにそうかも。サイドのほうがスペースがないから、そこに追い込んでしまえという。だったら、GKが攻め上がってシュートを決めればいいって思うかもしれないけど、そこまでできるGKはあんまりいないわけでしょう? 特にアジアには。だから、AFCフットサル選手権を戦ううえではかなり理に適っている。⑤比嘉のゴールは決まるけど、真ん中から打たれて入っちゃう分にはしょうがない。どうせ打たれても第2PKぐらいの距離だから、そこから打たれたらGKが頑張ってそんなに決められないだろうっていう。

  日本のパワープレーに対するディフェンスは、配給役のポジションにプレスにいくじゃないですか? そこの労力を完全に省いたパワープレーの守り方。

山戸 そういう位置からドン! と打てるのは日本には⑤比嘉ぐらい。

菊地 GKとしても、ドリブルで持ち上がるのはかなり勇気がいることだから、なかなかいけない。

  ドリブルが少しでも大きくなってカットされたら、ゴールはがら空きだから。

菊地 こちらの気持ちの弱さにつけこんだ、いやらしい守り方だね(笑)。

山戸 パワープレーに入んないとどうしようもない、パワープレーに入ってもどうしようもないという状況でしたね。

  先制点を取れなかったら勝ち目はなかった。

菊地 本当にこの力関係では先制点は絶対だよ。今日、もし日本が先制点を取ったらイランは苦しい。立場は逆転していた。

山戸 このぐらいの力の差だとそうですね。

菊地 そういうところで、これまで危ういシーンがありながらも、何とか結果を出してきた⑤比嘉にミスが出てしまったのは痛い。

  ⑤比嘉はマカオでの決勝のときにも、最後尾でのパスをカットされて失点したというシーンはありましたけどね。

菊地 そうか、今日に限ったことではなかったんだ(笑)

山戸 ただ、あのときは⑤比嘉しか縦パスという攻撃のスイッチを入れる選手がいなかった。それをイランにも読まれていたんでしょう。

菊地 今日の日本の攻撃で象徴的だったのが⑦金山友紀。ドリブルで縦に仕掛けられるところでも仕掛けない、前すら向かない。それではイランには怖さを与えることはできない。リスクのあるプレーなのは確かだから、サッポ監督がそういう風にしないさいといっているのかもしれないけど。

山戸 キルギスに対して、日本の選手が「あんまり怖さがなかった」といってましたけど、イランは日本に対して同じような感情を抱いたんじゃないですか? 全然勝負しないから怖くなったと思うんですよ。

  ボク、今日は昨日のキルギス人の気持ちがわかりましたもん。ああ、こんな感じだったんだって。

菊地 イラン戦に関して何とか粘るという気持ちがあるのが、これまでのイラン戦だと②鈴村1人だった。その②鈴村も退場してしまって、あんまり期待できなくなった。⑩木暮も連戦の疲れで明らかにキレを欠いていた。だから「どんな原稿を書こうかな」なんて考えてしまうような、そんな最後の10分間だったね。

山戸 あまり希望のない10分間でしたね。

菊地 また国旗を持ってウィニングランするんだろうな~って。いつものように日本の選手はシクシク泣いて、いつものようにサッポは負けたときに限ってピッチ上で円陣を組んで、みたいな。同じような光景でしたね。

  マカオのときも、ベトナムのときも、ずっと同じ。

菊地 まあ、今回はイランがキッチリやってきた。イランにしてもあそこはゴタゴタが多いチームだから、チーム力を維持できないことになったりしたら、わからない。

  現時点ではそれぐらいの実力差だと思いますよ。

菊地 目指すのは来年のフットサルワールドカップ出場権なわけで。だから、日本としては自分たちで乱すことなく、1歩1歩積み上げていくしかないと思う。

山戸 00年の大会からいる選手がいて、彼らはグーンと伸びてきたと思うんですが、これからどれぐらい伸びしろがあるのかなって。日本としても新しい世代が出てこなければいけないなと。

  イランは8カ月前からトレーニングをして、週3日、ほとんどクラブチームみたいな感じで強化してきた。当たり前に取れるはずだったアジア王者っていうタイトルを取り逃したのは、イランにとって一大事だったと思うんですよ。

菊地 柔道が金メダルを逃したりすると、結構大変ことになるじゃない? そういう雰囲気がイランのフットサルにはあると思うんだよね。

山戸 イランにとってはAFCフットサル選手権のタイトルは絶対に抑えておきたいものなんでしょうね。⑨シャムサエーは「日本でタイトルを奪い返すことに価値がある」といっていました。

菊地 今回はものの見事にリベンジされましたね。

ウズベキスタン、スタン系王者を防衛!

  では、3位決定戦にも触れておきましょう。

菊地 ボクは今回、キルギスがウズベキスタン越えを果たすのかなって思っていたんだけど。

山戸 前半はウズベキスタンが3点リード。前半は相当ぬるかった。

  スタン系対決はこういう展開になりかち。格で上と思われるチームが、前半でポンポンと取るという。

菊地 準決勝で負けて3位を取ろうというモチベーションでキルギスは及ばなかったのかな。そういうところにチームの総合力が見えてくるけど。

山戸 昨日の日本戦で追い上げてくるキルギスと、今日の前半のキルギスでは全然同じチームとは思えなくて。

菊地 それが疲労が原因なのか、メンタルが原因なのか。ボクらから見てると、こんな展開になるとは思えないんだけどな~。

  やっているフットサルではキルギスのほうが上なのかなとも思いましたけどね。

菊地 ウズベキスタンはあまりトリッキーなことはしない。最後の場面ではスピードやパワーで決めるところがある。そういうところはロシア系の流れを汲んでいるのかなって。ウクライナが来たときに感じたような印象を受けたんだけど。そういうところでゴリ押しされてしまうのかな。

  カザフスタン(AFCを脱退、現在はUEFAに加盟)はどういう感じのチームだったんですか?

山戸 カザフスタンはウズベキスタンに近い。

  中央アジアの中でもスタイルは違うんですね。

菊地 カザフスタンとウズベキスタンという大国があって、キルギスは小国という位置づけだからね。

  民族的にも完全にロシア系のウズベキスタン、カザフスタンと、モンゴル系、ロシア系が混ざっているキルギスという違いがある。モンゴル系のキルギス選手の顔立ちは本当に日本人に似てますし。

菊地 だからなのかな? ボクらもキルギスを応援しがちだよね。だって、山戸さんなんて、すっかり⑦ジェトイバエフ(ヌルジャン)のファンじゃないですか(笑)?

山戸 「ヌルジャン」っていう響きがよくて(笑)。

菊地 この試合は言い方は悪いけど、決勝の「前座試合」のような雰囲気だったんだけど、かなり盛り上がったと思う。キルギスがパワープレーをしたり、ウズベキスタンも同時にパワープレーをしたりして、GKが交代ゾーンにダッシュするのにどよめいたりして。前半はまったり感はあったけど、試合としては面白かったんじゃないかな。明日の関西の草フットサルではみんなパワープレーをやってたりして(笑)。

  関西ではパワープレー対パワープレーが当たり前になったりするかもしれませんよ(笑)。

山戸 サッカーでは3点差がついてたりすると、ほとんど逆転は不可能じゃないですか? 野球だと「逆転満塁ホームラン」とかあったりしますけど、そういう意味でこのパワープレーはフットサルの1つの面白さだと思います。

菊地 サッカーではデカイ選手を入れて放り込んだりすることを「パワープレー」っていいますけど、フットサルの「パワープレー」のほうが面白いよね。


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