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トップマッチレポート【adidas CUP 2009】決勝 セレッソ大阪U-18-FC東京U-18

Match Report マッチレポート


2009/8/2

adidas CUP 2009 第33回 日本クラブユースサッカー選手権(U-18)大会
決勝 セレッソ大阪U-18-FC東京U-18

菊地芳樹(本誌) 構成

09年8月2日(日)/18:00キックオフ/神奈川県・ニッパツ三ツ沢球技場/観客2114人

セレッソ大阪U-18
0-0
0-0
0-0
1-0
FC東京U-18
オウンゴール(延長後半3分) 得点者  

ゲームのあらすじ
守備面のつぶし合いが中心となる展開の中、FC東京は何とかチャンスを作り、合計16本のシュートを放った。その中、ゴール枠に当たるシーンが3回もあったりで、ゴールは生まれなかった。一方のC大阪は守備面の対応に追われ、シュートは合計わずか3本。ところが、延長後半に右のロングスローから敵のオウンゴールを誘って得点。これを守り切り、96年大会以来の、13年ぶり2回目の優勝をもぎ取った。

「気持ち」がセールスポイント
C大阪、ミラクル優勝

屋根のないニッパツ三ツ沢球技場で、雨が降ったり止んだりを繰り返す悪コンディションの中、2000人以上の観客が集まった決勝だった。

立ち上がり4分にFC東京は左からビッグチャンスを作り、⑨山口潤がシュートを打ったがゴール上に外す。それからは、お互いにフィジカルコンタクトの多い激しい守り合いとなり、チャンスらしいチャンスがなかった。「もう少しつなぎたかった」(倉又寿雄監督)というFC東京だったが、準決勝の京都戦に比べ、予想以上に出足のいいC大阪の守備に、なかなかいい展開ができない。37分に、混戦から⑪梅内和磨がフリーで打ったシュートも、ゴール左に外れた。ファウルでつぶされる場面も多く、FKもたくさん得たが、39分に遠目から狙った⑩重松健太郎のブレ球は、ゴールの左角を叩いた。

C大阪は、前半右からのクロスが2本あったのと、遠目からのFKを⑦杉本健勇が狙ったくらいで、攻撃面で目立ったシーンはなかった。FC東京のプレッシャーに、「取りあえず蹴っとけ」的なクリアボールも多く、それが、ゴールラインを割っていく。また、FC東京もC大阪の激しい守備に手を焼き、最終的には縦をアバウトに狙うパスが多くて、これもゴールラインを割った。というわけで、試合の流れがしばしば切れ、お互いにゴールキックが多くなるという展開だった。

後半の15分あたりに、C大阪は⑦杉本をCBからFWに上げ、いつものゴールを狙うシフトにスイッチオン。しかし、いいボールがなかなか来なかったのと、FC東京にチャンスが増え始めたことで、30分過ぎに元のCBに戻し、「バランスを重視」(中谷吉男監督)した。ゴールはセットプレーに活路を見出すよう状況になっていった。

FC東京は、26分に左サイドを③阿部巧がえぐって惜しいクロスを入れたのと(C大阪DFがクリア)、30分に左からのFKを⑩重松がフックボールで直接狙ったのが、またしてもバーを叩くシーンがあった。終盤はC大阪にも右からクロスを入れるシーンが2度あったが、シュートには至らず、試合は10分ハーフの延長戦に突入。

お互いに決め手がないまま迎えた、延長後半3分だった。右サイドからのスローインの場面で、ロングスローを武器とする⑦杉本の出番となる。しかし、今日のロングスローは雨でボールが滑るせいもあるのか、あまり飛んでいなかった。FC東京もそれを見越してニアサイドに人数を割き、ここまでは完璧に対応していた。ちなみに高さを武器にしたC大阪のCKやFKの場面でも、FC東京はMIPを獲得した⑥平出涼を中心によく跳ね返していた。

予想通り、⑦杉本のスローはニアサイドの⑨永井龍の頭へ飛んできた。FC東京は2人がかりで競り合った。ところが、ここでボールはFC東京選手の頭に当たって後方へ向かい、GKの頭上をフワリと越えてゴールに入ってしまった。FC東京応援団の多いスタジアムは、何ともいえない微妙な雰囲気に包まれた。

残り時間、FC東京は猛攻を仕掛けた。最も惜しかったのは、9分のFKのシーンだ。⑧年森勝哉が前方に入れたボールがワンバウンドし、⑬武藤嘉紀がヘディングで狙ったシュートが、これもバーに跳ね返った。程なくして試合終了。激戦はC大阪がもぎ取る形となった。

ピッチ上で長く、長く歓喜が続いた、大喜びのC大阪の今大会は、まさにミラクル優勝だった。1次ラウンドでは札幌と東京Vの2チームと、勝点6で並び、東京Vとは数字ではすべてで同じながら、直接対決を2-0で制していたので、2位で決勝トーナメントに進出。準々決勝は横浜FMを延長で、準決勝は京都にPK戦の末に、そしてこの決勝も延長で制した。

FC東京のハイプレスで縦に速いサッカーは、既に上位の常連だが、これまでこの大会の準決勝以降は、いわゆるボールを大事にするサッカーをするチームが多く勝ち上がってきていた。今回のように、両者ともにあまりポゼッションにこだわらず、いわゆる蹴り合いになったという決勝は、かなり異質なものだ。

「なかなか最後の壁を破らせてもらえなかった」(倉又監督)というように、C大阪のサッカーは、ガッツリ守ってから、機を見て個のストロングポイントを生かしてゴールを狙うもの。さらに、セールスポイントが「気持ち」ときている。「何をするにも気持ちがないといけない。その上に技術、戦術が立つ」(中谷監督)という考えだ。Jの下部組織だから、ポテンシャルのあるうまい選手はそろっている。そんな彼らの、個の器をさらに大きくしようというところで、多くの指導者の方が試行錯誤し、苦労しているわけだ。そんな中、その手段でここまでハッキリとメンタル面からアプローチしているチームは珍しく、また新しい風なのではないだろうか。

キャプテンの扇原貴宏は、気持ちを前面に出すプレーをやり始めたことで、「球際でも勝てるようになった」という。「強気で行けば、こっちにボールが転がってくる」。これはまさにあの闘将として鳴らした元日本代表、柱谷哲二氏の名言ではないか! 巡り巡って、また「心」の大切さがクローズアップされるということなのだろうか。

ただ、準決勝、決勝のプレーは、正直、“気持ちだけ”の感も否めなかった。個人的には、さすがJクラブの選手というボールテクニックの高さや、ハッとさせられるようなプレー選択&判断で、見る者を楽しませてくれてもいいのではと思う。プロ予備軍なのだから。

記録を見れば、今大会は1次リーグからかなりの混戦で、3連勝で抜けた横浜FMと川崎の2チームも、準々決勝で破れている。この夏の時点では特に飛び抜けたチームがいなかったということなのかもしれない。紙一重のところを気持ちで制してきたC大阪に対し、巻き返しを図るチームも悔しくて当然「気持ち」が出てくるだろう。その中でC大阪や各チームがどういうサッカーをしてくるのか興味深い。というわけで、このユースサッカー界の、今年の今後の展開を楽しみにしたい。

C大阪・中谷吉男監督
今まで肝心な部分で負けていたところで、今季は気持ちの強化を図りました。喜怒哀楽を、サッカーを通して表現しなさい。サッカーを通じて、パッション、情熱を出していこうといいました。今日はすごくセレッソらしさが出て、いいゲームだったと思います。FC東京さんは本当に強いチームで、バーに何度も当たって助けられた。決勝でいいゲームをさせてもらって感謝しています。この優勝は本当に大きな財産になると思います。

C大阪・杉本健勇(大会MVP)
もう、最高ですね。みんなでこのために準備してきて、信じてやってきたので。チーム一丸でやった結果です。自分の持ち味はDFとFWもどちらでもできる幅があるのと、ヘディングとキープ力です。高円宮杯で、もう1回最高の気分を味わいたい。Jユースと3冠を狙っていきたいです。

C大阪・扇原貴宏
相手は2トップがキープレーヤーだったので、前半を押さえられればチャンスがあると思っていました。全員が気持ちを一つにして、気持ちで上回りました。気持ちがあったからこそ頑張れたんだと思います。

FC東京・倉又寿雄監督
大会を通して選手の成長をすごく感じていますし、こういう結果になりましたが、ゲームの内容には満足しています。彼らは本当によくやってくれました。なかなか(C大阪)の壁を破れなかった。あれだけの粘り強いディフェンスはなかなかないですね。失点はしょうがないです。

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