第7回 高橋健二監督(矢板中央高校) [ページ3/3] |
『いつまでもトーナメントに固執していては、これ以上は進歩できない』(古沼)
古沼
この前九州に行ったときに、新人戦を見てきたんだけど、九州のチームはレベルが高いね。
新人戦をはじめ、リーグ戦を積極的に取り入れていることが、強化につながっているんだと思う。
どこも、チームの出来上がりが早い。現時点では、関東勢とずいぶん差があるように感じた。
関東では唯一、流通経済大柏の新チームを見たけど、「やっぱり1、2年生のチームだな」という印象しか持たなかった。
ストライカーDX
高橋先生は、古沼先生が高校選手権にリーグ戦を取り入れるべきだと訴えているのはご存じですか。
高橋
ストライカーDXで読みました。
私も大賛成です。
我々が選手権に出場するときは、いろいろと準備をして大会に臨むので、1試合で終わるのは本当に寂しいですから。
私自身は、県大会でもリーグ戦をしてほしいんですが、現時点ではなかなか理解が得られません。
一発勝負の面白さがあるのは確かだと思います。でも、リーグ戦のメリットは大きい。
高校だけではなく中学でもすべてトーナメントなので、試合数が少ないのは問題だと思います。
リーグ戦であれば、一度負けても、修正して次の試合に臨めるんだけど、トーナメントだと次の大会まで待たなければならない。
そういう経験を積めないのは、選手にとって不幸なことでしょうね。
時間も同じ。プリンスリーグ以外で90分の試合をしている大会は栃木にはまだないですから。
古沼
長い時間続けてきたものを変えるのは大変なんだ。
私が最近考えているのは、日本人の特性。
日本人はノコギリやカンナを使うときに引いて切っていくのに、欧米では押すときに切る。ボートでも、進む方向に対して日本人は前を向いて櫓を漕ぐのに、向こうは進行方向に背中を向けてオールを漕ぐ。
そういう違いは、サッカーでもあるんだよ。
だから今はまだ、リーグ戦に違和感を感じる人のほうが多いというだけのことじゃないかと最近は思うようになった。
でも、日本よりも長い歴史を持つヨーロッパでリーグ戦が主流になっているのは、それだけの理由があるから。
特に、選手を育成することを主眼に置いたとき、トーナメントよりリーグ戦のほうが有効なのは間違いない。
トーナメントのほうが日本人に合っているという意見は尊重するけど、いつまでもトーナメントに固執していては、これ以上は進歩できないように思う。
高橋
トーナメントだと、“負けないサッカー”が第一になります。
慎重に戦うあまり、日頃の成果が半分も出せない、ということがよくあります。
古沼
野球の世界も同じで、トーナメントで育ってきた選手ばかり。
でも世界大会(06年のワールド・ベースボール・クラシック)ではそれが功を奏して優勝した。
彼らは、甲子園があったから自分たちは成長できたといってはばからない。
だから私も、トーナメントにはトーナメントのよさがあるのを否定はしない。
サッカーでも、何から何までリーグ戦にすべきだといっているわけじゃない。
例えばクラブチームには、リーグ戦の弊害がすでに出ていると私は考えている。
中学からリーグ戦、しかも90分ゲームをしていると、どうやって体力を温存しようということばかり考えるようになる。後ろでパスばかり回しているので、ちっとも面白くない。
私が指導した滝川ニや流通経済大柏が高円宮杯でJクラブを倒したのも、そういう特徴を理解していたから。
高橋
なるほど。
今の話を聞いてわかったんですが、これまでウチがプリンスリーグで勝てなかったのは、まさにそういう理由だったんでしょうね。
一発勝負の試合しかできないから、まんまとやられていた。
栃木でやるのと同じサッカーをしていたから、相手は簡単にかわせたんだと思います。
古沼
力が上の相手にも、やりようはある。
そういう方法論がなければやられてしまう。
高橋
ウチにはその方法論がありませんでした。
それも、リーグ戦を経験していないことの弊害だったんでしょうね。生徒だけではなく、我々指導者を含めて。
古沼
本当に強い相手には、どんな方法論でも太刀打ちできるものではない。
今の日本サッカーは、方法論さえあればなんとかなるレベルなんだ。残念ながら(笑)。
ストライカーDX
今日はありがとうございました。
昼間聡欣(本誌)取材・文
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