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古沼貞雄 情熱 著: 元川悦子
古沼貞雄 情熱
著: 元川悦子
全国制覇9度の超名門・帝京高校サッカー部。偉業はどのようにして成し遂げられたのか? 名将・古沼監督の指導法が今明らかに!
高校サッカーの指導者にとって貴重な1冊となるだけではなく、若者を管理するマニュアルにも。
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不定期連載 古沼貞雄 生涯夢求

高校選手権へのリーグ戦導入に向けて アンケート集計結果発表

第2回 本田裕一郎監督(流通経済大学付属柏高校)その1 [ページ1/2]

帝京高校で全国制覇9回という偉業を成し遂げた古沼貞雄氏に同行して、サッカー関係者と話し合う内容を伝えていこうという連載の第2回。
今回、対談形式の取材をお願いしたのは、千葉県の流通経済大学付属柏高校で指揮を執る本田裕一郎監督。
本田監督は、かつて市原緑、習志野で指導者として成功を収め、2000年に流経大付柏高に赴任。今では市立船橋や八千代を抑えて、強豪がひしめく千葉県の高校サッカーをリードする存在となっている。
実は流経大付柏高は、ここ数年、古沼氏が臨時コーチとして時折指導しているチーム。
今回も、古沼氏がコーチを務める日に合わせて取材をお願いしたのだが……。
当日は、高校総体に向け、時之栖スポーツセンター(静岡県御殿場市)で合宿を敢行。
グラウンドに着いて驚いたのは、古沼氏が短パン姿で笛を吹き、トレーニングの中心に立っていたこと。
てっきり、練習を眺めて最後に一言ふた言アドバイスを送る程度だったと思っていたのだが、ベンチから練習を見守っていたのは本田監督のほうだった。
そこで急きょ取材方法を変更し、まずは本田監督へのインタビューを行うことになった。
なお流経大付柏高は、取材後の高校総体でベスト4に入り、高円宮杯第18回全日本ユースでは見事に優勝。
初めての全国制覇を成し遂げた。

『日本サッカーにエリートプラグラムは適さない!』

ストライカー
まさか練習を見ながらお話を聞けるとは思いませんでした。

本田
古沼先生に来てもらったときは、すべてお任せするようにしています。もちろん、若いコーチにサポートさせますが。先生もイキイキとやってくれます。
先生に笛を持ってもらうと大変勉強になります。時間内にピッタリ終わりますし、とにかく練習のスピードが違う。選手はいつもヘトヘトになっています。

ストライカー
ではまず、プリンスリーグの話から聞かせてください。
実は先日も古沼先生から「プリンスリーグをもっと有意義なものにしたい」という話を聞いたばかりなんです(詳細はストライカーDX9・10月号『表サッカー裏サッカー』に掲載)。
本田先生は、チームがプリンスリーグで戦う一方で、役員として運営する立場にもあるわけですが、今後、どのようにしていこうと考えていますか。

本田
その話をする前に、日本サッカー協会のユース年代の育成の方向性が定まっていないことが問題だと思う。
例えば福島(Jヴィレッジ)で始まったエリートプログラム。日本のサッカー選手に、ああいう教育は向いていない。まず成功しない。子どもを、閉鎖された環境で育てるのは、大反対です。
日本の場合、“野に育つ人”を大事にしていったほうがいい。ストライカーが育たないからといって小さなころから教えていくのではなくて、選手が現れるのを待ったほうがいい。自由にいろんな環境で育てない限り、野性味あふれるスーパーな選手は出てこないと思う。与えられて覚えるのもいいと思いますが、若者が自分で求めたときのパワーは底知れないものがある。
戦後から続く学校教育の画一化は、全体の教育水準を上げる方法としては成功したが、個性を育てるという点では疑問が残る方策だった。何か、サッカーがそれと同じ方向に行こうとしている気がする。

ストライカー
エリート教育は日本サッカーの土壌に向いていないと考えているわけですね。

本田
クラブのユースというのも一種のエリート主義で、もう20年も続けているのに、いまだに日本代表の多くは高校サッカー出身者が占めているのが実情。06年ワールドカップの日本代表選手23人中、実に19人が高校サッカー経験者だった。
今年の関東プリンスリーグを見ても、2つのリーグのチャンピオンはうちと市船でクラブじゃない。
クラブサッカーは高校サッカーと比べて大変恵まれているにもかかわらず……。
先を考えたとき、まだしばらくはクラブ的な方向に進んでいくことになるのだろう、とは思う。プリンスリーグでも、今後しばらくはクラブチームが活躍していくのだろう。
でも実際にクラブサッカーが高校サッカーよりもいい指導をしているというわけではなくて、いい選手がクラブに集りやすいというでけのこと。Jリーグの関係者のほとんどは大卒の人たちで、そういう人たちが現在の流れを作ってきた。高卒のJリーガーは、いる場所がなくてかわいそうなくらい。
そのJリーグの思惑に乗せられて、親は“勘違い”してきた。高校サッカーよりもJリーグのユースに行かせたほうが優秀な選手になれるんだと。それに、日本人はブランドに弱いからね。
そんなことさえなければ、高校サッカーからも十分いい選手が育つと思う。でもやがて、世の親たちも、目が覚めると思うよ。
私自身、指導者として勘違いしていたところがあったけどね。

ストライカー
グラウンドなどの環境面はクラブのほうが恵まれているのは間違いないと思いますが、実際には高校と実力差がほとんど出てきていない。それはなぜでしょうか。

本田
まだ真剣に取り組んでいないからだろうね。
今のクラブはまだ、トップチームの強化で精いっぱい。
日本的教育の中で、クラブチームがどうやっていけばいいかを突き詰めて考えていない。
比較的真剣に取り組んでいるのがサンフレッチェ広島。あそこは、選手を同じ学校に入れて学校と協力し合っている。だからユース年代で結果を出した。
広島を除けば(前方に目をやって)この子たちの練習量のほうが絶対に多いですよ。
この年代は、一番練習しなきゃいけない時期。その年代のいちばんいい選手を集めているのがクラブだけど、練習量は少ない。練習しなければならないときに、それは問題だと思う。

ストライカー
クラブの場合は、練習する場所に通うだけで時間がかかります。

本田
プロ養成所なんだから、広島のように、合宿所を作って、全員同じ高校に通わせてキチッと選手管理するやり方がベストだと思う。経済的にもクラブが負担してあげるのが当然だろう。

ストライカー
あるいは、学校にクラブ的なものを取り入れていくか。

本田
そう。もしかしたらそれがいちばんいいかもしれない。
でも、そのためには協会関係者の考え方を変えてもらわなければならない。今はクラブのほうにばかり目が向いているから。
子どもを育てる環境としては、うまい選手ばかり集めてもダメで、うまくはない選手も必要。そういうことを協会は考えていない。
協会は、アマチュア選手1人1人からお金を取っているが、クラブだけにしたらどうか?
高校の大会、特に総体と選手権について試合方式を再考すべきという意見にも、まったく耳を貸そうとしない。リーグ戦の導入や45分マッチへの移行など、古沼先生をはじめ多くの先輩方が提言しているにもかかわらず、改善の余地がないのはどういうわけか。

>ページ[2]へ続く

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