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第85回高校選手権は、高校生らしい試合となった決勝をはじめ、地域間の格差がほとんどなくなった素晴らしい大会でした。
1回戦から好ゲームが多く、開幕戦の滝川二-暁星をはじめ、八千代-国見、武南-四日市中央工、桐光学園-大阪朝鮮など、スタンドを沸かせた熱戦が数多く展開されました。そして、戦国大会の前評判どおり、PK戦にもつれ込んだ試合が実に15を数えました。
そういった要素が大会の盛り上げに貢献したのは事実でしょう。しかしその一方で、敗れたチームに対して、「もう少し何とかならないものか」と感じた人も少なくないはずです。
前述の暁星、国見、四日市中央工、大阪朝鮮などは、大晦日に消えてしまうのは惜しいチームでした。
運がなかったといえばそれまでですが、もう少しどうにかならないものでしょうか。
母校を応援しようとはるばる会場に駆けつけた応援団や学校関係者にも、もう少し大会の雰囲気を味わわせてあげたいという気持ちになりました。
一発勝負だからこそのドラマ性はあるのかもしれませんが、日本のサッカー界を見渡しても、こうした完全なトーナメント大会は、いまや決して主流ではありません。トーナメントの前にリーグ戦を取り入れ、出場チームすべてに複数の試合を経験させようという大会が、近年増えているのです。ワールドカップの影響が少なからずあるのかもしれません。
最近では、ユース年代でもリーグ戦を行うのが当たり前になっています。各地域ごとに行われているプリンスリーグ(高校チームとクラブチームが参加)を筆頭に、リーグ戦を積極的に導入しています。高円宮杯(U-18)でもJユースカップでも、決勝トーナメントの前にリーグ戦を戦っています。高校チームの大会だけが、時代に取り残されているのです。
高校サッカーの現場にいた当時から、いつかは解決しなければならない大きな課題として常に思い悩んでいました。。
すべての全国大会にリーグ戦を導入するのは無理にしても、高校チームの最大の目標である高校選手権だけでもなんとかならないものか、と考えていました。
多くの高校が、この大会を目標にトレーニングを積み重ねてきます。それなのに、たった1試合だけで終わりというのは、残念でなりません。
もちろん、全国大会だけではなく、都道府県予選の段階からリーグ戦を取り入れるのが理想です(静岡県などではすでに実施)。しかし、厳しい予選を勝ち抜いて出場権を獲得してきた全国の舞台だからこそ、この思いが一層強いのです。
リーグ戦を導入する最大のメリットは、すべてのチームが複数試合経験できることです。
私が監督を務めていた帝京は、幸いなことに初戦で負けることはほとんどありませんでした。しかし、初戦で当たった相手に対して「いいチームなのにかわいそうだな」と思ったことは何度もありました。特に、九州や東北のチームがこの大会に照準を合わせて苦労を重ねてきたのに、初戦で敗退し涙を流しているような場面に遭遇すると、「せめてもう1試合やらせてあげたいものだ」と強く感じました。
高校選手権という大舞台を経験させたい。そして出場した以上は、数試合戦わせてあげたい。高校サッカーの指導者を経験した人であれば必ず思うことです。
リーグ戦導入のもう1つのメリットは、より大きな注目を高校選手権に集めることが可能である、ということ。
高校選手権は、日本スポーツ界を代表する大会です。高校野球に次ぐアマチュアの一大イベントといっても過言ではないでしょう。
日本特有の愛校心や地域性、いわゆる郷土意識が、大会の成功に一役買っているのは間違いありません。
学校のチームがこれだけの規模の大会を行っているという点では、他に例がない極めて珍しいケースで、日本が世界に誇れるトーナメントです。日本独自の教育制度の利点を最大限に生かした大会といっていいでしょう。
Jリーグ発足当時、高校サッカーの時代は終わったなどという声もありましたが、その人気、注目度が衰えていないことは、今年の大会を見ればわかります(冷たい雨の中で行われた準決勝だけは観客が集まりませんでしたが)。
リーグ戦導入によって、大会の価値が一層高まり、より強いスポットライトを浴びるであろうことは、容易に想像できます。
さらに、チームによる有利・不利が減るのも間違いありません。現行のトーナメントでは、1回戦から戦わなければならないチームと、運良くシードされて2回戦から登場するチームとでは、大きな差があります。コンディション面はもちろん、最近では高校生にもイエローカードが出されるケースが随分増えました。トーナメントで1試合多く戦えば、2回にわたってイエローカードを受けて出場停止になる可能性も増えるでしょう。
今回私が提案する方法をとれば、チーム間の有利・不利が少なくなり、より正確に実力が結果に現れる大会になります。もちろん、(決勝トーナメント以外では)勝敗をPK戦に委ねるということもなくなります。
それでは、具体的にはどのようにしてリーグ戦を行うのか?
いくつかの方法が考えられますが、グループリーグを経て決勝トーナメントを実施するワールドカップ方式が最適でしょう。
まず出場48校を4チームずつの12グループに分ける。ここで各チームが総当たりで対戦するわけですが、試合日としては3日あればいい。12月29、31日と1月2日をこれに当てます(12月30、31日と連戦にしてもいいでしょう)。
1月3日からは決勝トーナメントです。各グループの1位と、2位の中で成績上位の4校、計16チームが進出します。ここからは従来どおりです。
つまり、現行より1日だけ多く試合を開催すれば可能になるのです。
会場は、グループごとに1つで十分なので、12会場。リーグ戦の最終日は同じグループの試合を同時刻に行ったほうがいいので、2つのグループごとに開催都県をまとめればいいでしょう。現在の東京、神奈川、埼玉、千葉に、静岡、茨城を加えれば移動の点も問題ないはずです(もちろん1県に4会場あっても構いません)。ちなみに、リーグ戦の最終日と決勝トーナメント1回戦が連戦になりますが、会場を近くすることで負担にならないはずです。
こう考えていくと、現在の大会のスタイルをそれほど変えることなく行えることがわかります。
日程、会場、人員の確保など課題はあるでしょうが、高校サッカーをより有意義なものにすることを考えれば、乗り越えられない壁ではないはずです。
せっかくの機会なので、高校選手権に対してもう1つ提案したいことがあります。
試合時間の変更です。
現在は前後半40分で行われていますが、45分に移行すべきでしょう(決勝戦だけは現在も45分)。
リーグ戦と同様に、クラブチームが参加する大会は、すでにどれも45分ハーフです。FIFAの主催大会では、ジュニアユース年代から45分ハーフなのですから、それも当然です(今や女子の大会でも45分ハーフで行われているほど)。
真夏に行われる高校総体が、選手の体調を考慮して時間を短縮しているのは納得できます。しかし、冬の高校選手権ではそんな心配は不要です。
高校サッカーだけが40分ハーフにこだわる時代ではありません。クラブチームと差をつけないために、そして、将来、国際舞台で戦う基盤を整えるために、45分ハーフへの移行は急務だと思います。
ただし、リーグ戦を導入することで選手の体調面に不安な点が出てくるのであれば、40分ハーフのままでいいのかもしれません。
長年高校サッカーに携わり、現場からは離れた今でもさまざまな形で接する機会が多い立場にいるからこそ考えたアイデアです。関係者、読者のみなさんの意見をぜひ聞かせてください。
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